=ヘッド冷却=
出力を安定して出すにはヘッドの温度が安定している事が大前提です。
XRのエンジン RFVCエンジンのヘッドは非常にコストが掛かっているヘッドだという事は
「特異なエンジン設計」で説明しました。
と言うのも プラグ裏にエアポートがあってヘッドの中を通って左右に分かれています。
このつくりは砂型の鋳型でひとつひとつ手作業でしか出来ません。
TT-RやKLXのヘッドを見ていてカムチェーンライン側の肉厚がかなり分厚く
熱の偏りは避けられず 冷却の効率が非常に悪いのが分かったからです。
XRの熱分布が気になり ヘッドの肉厚がどうなっているか十文字に切った事があります。
XRのヘッドの肉厚はドーム型で均一でした。
そしてエアのポートがプラグから後ろに貫通しているのを見たわけです。
ただヘッド個体に差がありバリで塞がっているものもあります。
PS.当店レベルのチューニングでは空冷で充分対応可能です。
いろいろ過酷な条件でレースに参戦してきましたがオーバーヒートの経験は一度もありません。
空冷は表面積が命です、XRのヘッドがこのようなつくりであれば効率を上げたい。
そこで造ったのが“クーリング エアポート シュラウド”です。
走行中エンジンに向ってくるエアをプラグ口に集めて冷却の促進を促すものです。
ジュラ材を切り出し直接ヘッドカバーに取り付ける事で表面積も上げる効果も狙っています。
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そして250用に造っていた「オーバークーリングシュラウド」
熱の発生は排気側が高いので表面積を上げつつ シュラウドで空気を集め導く。
ヘッドカバーのカタチが違うので 同じようには400Rには取り付け出来ない。
400Rだけはネジ止め式で製作した。
“クーリング エアポート シュラウド”と“オーバークーリングシュラウド”装着
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RFVCエンジンは放射バルブという形式が使われている。
ホンダのRFVCエンジン解説に書かれていたように
DOHCの多くは燃焼室がペントルーフが採用されている、
対しRFVCエンジンは真半球型
圧縮を上げるにはペントルーフ型は上げ易いが真半球型は同じ領域までは難しい。
しかし燃焼速度は真半球型の方が速く 同じ爆発圧に達するまでの時間が短い。
ドーム型の燃焼室の真ん中でプラグにより着火 均等な燃焼が促される。
しかしペントルーフ型は高出力の必須アイテムには違いありません。
燃焼室のカタチやスキッシュエリアで同じ容量の燃焼の効率が良いかを言っています。
↑図○
部分のように薄い隙間は燃え難い空間です。
↑:
この画は爆発の燃え広がりを示しています。
コレにより点火タイミングはペントルーフ型より遅くても良いメリットもあり トルクも多く得られる。
オフロードユースの場合 低中速でトルクがある方が実践で使いやすい事もあり採用されている。
またバルブの挟み角も狭い方が高圧縮型に作り易いがRFVCの場合構造上大きくなってしまう。
そこでサブロッカーアームを使う事でバルブの作動スピードを均等化し 充填効率を上げる役割を担う。
綺麗な燃焼に重点を置き その排気量で高出力を得ていますが
ポート形状の改善でよりシリンダーへの充填効率を上げる事が可能になります。
ホンダ車は基本 オフロード車は吸気と排気のバルブ比率は10:7
ロード車は10:8としているようです。
オフロードは低速からのトルクが必要なのでやや排気を絞る手法で
ロードは回転パワー型が必要とされるのでその比率を用いています。
また各メーカーでポートの特徴があり 折角ポートは大きいのに
バルブガイド部分の肉盛りが多くあり大きくポートが狭くなっているものも多く見られます。
各部段差の修正や鋳型の表面を磨いているものを
「ポート研磨」と言っている傾向があるようですが そんなのはヘッドポーティングには当たりません。
またポーティングは上を回す為のものと思われがちですが 上を回すのは勿論
全般的なトルクアップ、レスポンスアップが見込めます。
手の内は明かせませんが 使用目的などで5割は基本削るところは変わりませんが
もう5割は低速振り 中速振り 高速振り 低中速振り 中高速振りと味付けを変える事が出来ます。
勿論削る場所や手法が違ってくるのです。
また表面の仕上げについてですが 鏡面仕上げかある程度細かい突起がある方が良いのか
賛否両論ありますが パワーチェックして明らかな差が出ないのがその理由です。
ただ私が考えるに 鏡面は表面に空気がまとわり付く性格があり 実質ポート円内の通路が狭くなる事は分かっています。
またリューターで削っただけのような荒い凸凹は論外で乱気流が起こり コレもポート円内が狭くなる。
♯800のペーパー目ぐらいのツルツルが良いと思っていて シリンダーのクロスハッチぐらいの
凸凹が薄い空気の層を作るのでポート円内の面積も大きくエアが流れ易くなると考えます。
こうやってRFVCベースならでは出来る“美味しいとこ取り” 低速からトルクがあり 吹き上がりも速く
市販のDOHC以上に上までブン回るエンジン造りが可能になるのです。
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