まずXR400Rというマシンの素性を知る事が重要です。
<HONDA HPより>
本田技研工業(株)は、粘り強く扱いやすい出力特性の空冷・4サイクル・単気筒エンジンを軽量
・コンパクトな車体に搭載し、不整地で優れた走破性を発揮するオフロード走行専用車「ホンダ XR400R 」の'98年型モデルを7月31日より限定(200台)発売する。
このXR400Rは、輸出モデルとして'95年8月より北米や欧州などの世界各国で発売以来、高性能なエンデューロマシンとして好評を得ているモデルである。
今回、'98年型モデルとして主にサスペンション性能の向上を図ったモデルチェンジを行うにあたり、販売要望の高い国内において限定発売するものである。
=ホンダ XR400Rの主な特徴=
<エンジン>
●低・中回転域での力強いトルク特性や高いトラクション性能はもとより、ライダーの意思に忠実に反応する優れたレスポンス性を合せもった空冷・4サイクル・単気筒エンジン。
燃焼効率に優れたRFVC(放射状4バルブ半球形燃焼室)機構の採用。
軽量・コンパクトでオイルの冷却性能の向上に寄与するドライサンプ潤滑システム。
過酷な条件でオイルの油温の上昇を抑え、耐久性と信頼性の向上に効果的なオイルクーラーを装備。
ライダーの疲労を軽減させ、低振動に寄与する一軸バランサーを装備。
キックスタートを容易にするオートカム・デコンプ機構を装備。
<フレーム>
●軽量・スリム・コンパクトな車体と、軽快な旋回性や走行安定性を実現したセミダブルクレードルフレーム。
ホイールベースは、1425mmに設定。XR250Rに比べ僅かに25mmの延長にとどめたコンパクト設計としている。
リアフォークピボットは、エンジンを直接取り付ける同軸構造を採用。エンジンマウント用のクロスパイプやステーを不要とすることで、軽量化を図ると同時に、リアタイヤが路面から受ける衝撃を直接エンジンで受け止めている。
これらによって、全体的に高いフレーム剛性を確保しながら、ピボット部の剛性を適度 に低く設定することで路面からの衝撃を吸収しやすい操縦安定性に優れたものとしている。
リア・サブフレームは、ボルト・オンタイプとすることで、リア・サスペンションのメンテナンス性の向上を図るとともに、転倒によるダメージが発生した場合でもリア・サブフレームの交換で対処出来るなどより実戦的なフレームとしている。
<サスペンション>
●オフロードでの走破性に優れ高い剛性の前・後サスペンション。
フロントは、φ43mmの正立ハイブリッドタイプを採用(ストローク280mm)。カートリッジタイプのダンパーによって、路面追従性と限界性能の向上に寄与している。
リアは、熱ダレしにくいピギーバックタイプのダンパーを装備したプロリンクとすることで、乗り心地に優れ限界性能に優れたサスペンションとしている。(アクスルトラベル300mm)
フロントは、圧側16段階、伸び側12段階、リアは、圧側18段階、伸び側16段階の減衰力調整機構を装備することでセッティングの範囲を広くしている。
<カラーリング>
●燃料タンクに「XR」のロゴを大胆にあしらった躍動感にあふれ精悍なイメージのカラーリングとしている。
カラーリング名称:ロスホワイト
主要諸元 通称名 XR400R
車 名・型 式 ホンダ・NE03
全長×全幅×全高 (m) 2.165 ×0.820
×1.250 ⇒ 参考:ME06 2.100×0.910×1.225
軸 距 (m) 1.425 ⇒ 参考:ME06
1.425
最低地上高 (m) 0.310 ⇒ 参考:ME06
0.325
シート高 (m) 0.930 ⇒ 参考:ME06
0.925 注)250シートに交換で2cmダウン
車両重量/乾燥重量 (kg) 121/112 ⇒ 参考:ME06 116/108 XLR250R
125/114
乗車定員 (人) 1
最小回転半径 (m) 2.1 ⇒ 参考:ME06
2.1
エンジン形式 NE03E(空冷・4サイクル・OHC・単気筒)
総排気量 (cm3) 397.2
内径×行程 (mm) 85.0×70.0
圧縮比 9.3 ⇒ 参考:ME06 10.2 HRC
11
最高出力 (PS/rpm) 40/7,500 ⇒ HRCkit
44.5 ME06・08 30
最大トルク (kgm/rpm) 4.21/6,000
キャブレター型式 PD36 ⇒ PJ38.3(フォーランナーバルブ加工)
始動方式 プライマリーキック式 ⇒ ショートキックアーム
点火方式 CDI式マグネット点火 ⇒ リミッター解除兼用高進角型C.D.Iキット
潤滑方式 ドライサンプ式
潤滑油容量 (L) 2.2
燃料タンク容量 (L) 9.5
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式5段リターン
1次減速
2.826 ⇒ 2.667(Vital cross)
変速比 1速 2.615 ⇒ 2.615
2速 1.842 ⇒ 1.938
3速 1.400 ⇒ 1.474
4速 1.120 ⇒ 1.182
5速 0.926 ⇒ 1.000
タイヤサイズ
前 80/100-21 51M 1ビード
後 110/100-18 64M 1ビード ⇒ 120/90
ブレーキ形式
前 油圧式ディスク :Ф240mm ⇒ 軽量キャリパー(軽量ピストン)
後 油圧式ディスク :Ф220mm ⇒ 軽量ピストン
懸架方式
前 テレスコピック式 (サスストローク:280mm)
後 スイングアーム:プロリンク (サスストローク:300mm)
フレーム形式 セミダブルクレードル
XR400Rの前後軸重の比率はF:8 R:7となっています。
画像で言えば上映像↑の赤○が重心の位置となりバランスの良さが伺えます。
=冷却向上:ドライサンプシステム=
XR400Rはドライサンプシステムが採用されておりオイル冷却に大きく貢献しています。(コレは強みです)
潤滑に最低限必要な容量をエンジン内にキープし その他のオイルはフレーム側のタンクに送られます。
エンジンから一端外に出す事によりオイル冷却が一層促進され エンジン内の回転抵抗を最小限に抑える事が出来ます。
正直フレームヘッドに設置されたオイルクーラーはコア型のオイルクーラーよりも効率は落ちますが
当店の指定オイルを使ってもらえばオイルクーラーは必要ありません。
潤滑の定義は「多くのオイル量を速く循環させる事でオイルの劣化を遅らせることが出来ます」
当店OPT.として強化オイルポンプ(1.5倍)、高速駆動ギア、大口径リターンパイプがあります。
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↑上記スペックを見れば400のスペックがいかに軽量 ・コンパクトな車体に徹しているか良く分かります。
※ME08も同様のコンセプトで製作されている為 比較は旧XR250R(ME06)と比較します。
まずは車枠
全長×全幅×全高 (m) 2.165 ×0.820(0.798:ハンドル交換)
×1.250
⇒ 参考:ME06
2.100×0.910×1.225
車両重量/乾燥重量 (kg) 121/112
⇒ 参考:ME08:112/104 ME06:116/108 XLR250R:125/114
MD30:133/119
車重においてはXLR250R(MD22)よりも軽量というのが驚き。
パワーユニットにはXR600Rと同等の40PS(HRC:44.5PS)
特筆すべきは250cc同様の吹き上がりを示す。(脈動ナシ)
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私が好きなせいもあって店頭には400の車輌がある事が多い。
一般のユーザーさんは私が「これがXR400R」と言うまではほとんどが気が点かないようだ、
250かと思ったと。
それだけぱっと見は大きくないと言う事だろう。
レイアウト比較
型式 |
ME06 |
NE03 |
全長(m) |
2.100 |
2.165 |
全幅(m) |
0.910 |
0.820 |
全高(m) |
1.225 |
1.250 |
シート高(m) |
0.925 |
0.930 |
キャスター |
25°50′ |
25°15′ |
トレール(mm) |
100 |
94 |
XR250R(RVS250R)でレースに出ている時「こんなマシンがあったらな」と思った事がある。
650R・600や350で250のような感覚でコーナーに入るとフロントが食いつかずアンダーが出て滑る。
それにシート高が高く 視点が二階から見下ろすような錯覚に陥り 車体を寝かし難い。
車体が小さい250の車体に強力なエンジンが載れば“無敵”なマシンが出来る。
それがXR400Rとなって出てきた。
=余談=
当時ライバルは2ストが全盛でWR250R KDX250Rが発売と同時にレースにエントリーしてきた。
しかしこれらのバイクはエンデューロでは結果は出し難いだろうと思っていました。
と言うのもパワーは言うまでも無く有り余るほど 車体は一回り大きくシート高・重心も高い。
そしてこのタイプのバイクはキャスターが寝ている、XR650Rや600Rもそうです。
リアにパワーを掛けスライドさせてコーナーを回るタイプなのです。
250のようにハンドルで車体を寝かそうとするとド・アンダーでフロントが滑ります。
体力があるうちはスピードを維持出来ますが 腕が上がってくると嘘のように遅くなる事例が多いです。
レースの1/3までは速いがそれ以降は・・・ あの速さは何処へ
これは怖いバイクが出てきたなと思ったのがKDX220Rです。
カワサキのクセに前モデルよりサスが良く エンジンも下からトルクがあり高回転まで綺麗に回る。
車体は125ccのバイクに近い。しかしほとんどレース場で見る事は無かった。
経験不足と言うか バイクを見る目がないユーザーが多くて
当方としては大いに助かった事を思い出しました。
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↑上図を見て分かるように車体レイアウトはほぼ同寸
‘96から250も含め“スーパーXR”と言うネーミングで出てきて、
両車はウッズランにウェイトをおいて 特にキャスターを立ててきた。
コレはコーナー・コーナーでスパッと車体が寝るし オーバースピード気味でも
思うラインに嵌める事が出来る。
出力は600と同じ40PS(250Rは30PS)
最高出力(PS/rpm) |
40/7.500 |
最大トルク(kgm/rpm) |
4.21/6.000 |
特筆すべきはビッグシングルならではのドッ、ドッ、ドッという「脈動」が無い事、
250のようにペロッと振動無く回るエンジン
吹き上がりが速い所以です。
故に600cc以上のビッグシングルを相手にした場合 回転の上昇中に
400はもっと吹き上がりが速いので置き去りに出来るわけです。
PS.XR400Rが発売されてリアのリンクで3cm下げられる事から それを推奨していました。
当初のサス設定は非常に硬く モトクロスコースなら丁度いいのですが
林道などはサスが動かずグリップし難かった、リンクで下げる事により圧縮レートが下がって
ソフトになり 初期の動きが早くなり従来のエンデューロ向きになるのです。(重心も下がり一石二鳥)
ソレをユーザーに薦めるとアンダーフレームが地面に摺るようなのはちょっと・・・ と言う。
下げても250Rよりも地上高はあるのでその心配は無用。
これも経験不足の一言に尽きる 呆れてしまった。
本題に戻ると
400のエンジン構成を見てみると250ベースの設計で必要な強度がいる部分を強化したものです。
また同年代のXR系の中でも異質な構造を持ち 極力軽量化と必要な剛性を融合した造りです。
エンジンをバラさずクラッチ交換が出来る事も400&650Rならではです。
ただ自主規制で低い時限でリミッターが設定されている事がジャマです。
8.000台rpmぐらいまでしか回らない設定です。
(電気リミッターに加えてオートデコンプ機構で機械式リミッター)
エンジン単体では13.000台rpmぐらいは回る素質が備わっています。
その特性を活かす為に当店ではリミッター解除兼用高進角型C.D.Iを装着する事に成功しました。
市販化はしませんが永年時間が掛かったチタンバルブも製作完了し「向うところ敵無し」仕様に拍車が掛かります。
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以上の事から いかにXR400Rが従来のXR系と異なるコンセプトで出てきたかが
分かって頂けると思います。
コレをベースに更なる軽量化とパワーアップを図っていくわけです。
すでに二十年前 その当時の手法で4サイクルモトクロスにて
並みいるモトクロッサー(特に外車600ccクラス)を抑え何度も優勝を飾っている実績を持ちます。
現在更に新しい考察・趣向でもっと上を目指す事が可能になりました。
当店チューニングのXR650R(ノーマル62PS仕様:HOTCAM・ヘッドポート・PJ38.3・フライホイル超軽量加工)
よりも 加速では当XR400Rの方が速いという現実があります。
=END=