この“地上最強のXR400R”は435cckitで製作します。
排気量拡大は安易にパワー&トルクが得られます。
しかしよ〜く造りや構成・材質を吟味しないとどれでも良い訳ではありません。
このキットを選んだ理由はピストンが鋳造製と言う事と 圧縮が高過ぎない事。
外品のほとんどは鍛造製で膨張率が高く重量が重い。
ノーマルシリンダーとノーマルピストン(鋳造製)のクリアランスは3/100
外品の鍛造ピストンは膨張率が低いもので6/100でノーマルの倍です。(オイル消費大)
多くは8/100が通常でシリンダーにピストンを組んで上から見るとピストンリングが見えるほど
大きなクリアランスです。
ソレに加え外品の鍛造ピストンはその機種専用であってピストン工学的には専用ではない事実。
例えば70〜75mmのベースの鋳型があって外の削り直しでXR用(73mm)になり
TT−R用(73mm) あるいはKLX用(72mm)になっています。
ピストンは冷間時 上から見ると楕円で横から見ると台形です、
温まると真円になるよう造られています。
肉厚がまちまちなピストンが温まって真円になる訳がなく
ピストンの隙間から爆発圧は下に抜けるし オイルは上がります。
鍛造のメリットは強度がある事ですが 密度が高い分膨張率が高くクリアランスを多く取らなければなりません。
この強度はレシプロエンジンには必要無い過剰強度です。
※HRCピストンは鍛造のメリットが生かされており 強度がある分薄肉で
膨張率はノーマルと変わらないよう造られています。
同じ鍛造製と語らないように。
------------ Conclusion
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このキットはノーマルと同じ鋳造製で絶妙なクリアランスでボーリングされていて
クロスハッチも純正より細かい仕上げです。
かつてタンクメーカーが作っていた440ccキットはピストン鍛造製で頭がドーム型に膨らんでいるタイプで
そのまま組んで使っていると あの頑強な植え込みスタッドボルトがボケて上がった事があります。
(組んだ2例中2例とも同様のトラブル発生)
要は圧縮が高過ぎるのとピストンが重いせいで振動が発生 そのダブルパンチでスタッドがボケるのです。
また圧縮が高いと言う事はパンチ力・パワーは出易いですが 高回転が回り難くなるのと
一度エンジンが止まると再始動が難しくなるデメリットが出てきます。
このキットはピストンヘッドが平らでボアが広がった分圧縮が上がる
回転抵抗も犠牲にならないと言う事でも良いと考えます。
圧縮比 ノーマル:9.3 435cc:10.2
そしてトータル重量が重くならないようピストンピンが短く
□部分のピン空間とクランクケースの空気の同調を配慮されている点です。
=各種ピストンまわりの重量比較=
STDピストン
ノーマルピストンピン 軽量ピストンピン
|
STD |
HRC |
435cc |
ピストン (g) |
284.4(実測) |
280.0 |
282.9(実測) |
実測 |
STD |
軽量ピン |
kit付属ピン |
↑ 〃 ピン(g) |
74.7 |
68.4 |
83.7 |
純正ピストン+純正ピンの総重量:359.1
クランクとのバランスを見ればこの重量が基準となります。
HRCピストン+純正ピンの総重量:354.7
435kitの総重量:366.6
HRCピストン+軽量ピンの総重量:348.4
440ピストン+軽量ピンの総重量:351.3
↑上記の事からノーマルより重量が軽く クランクとのバランスも崩れないので
ピストン外周面積は上がりますが(摺動抵抗) エンジンの高回転化の妨げにならない。
ソレに加え圧縮漏れ防止のコンプレッションスリット
摺動抵抗軽減・焼き付き防止作用が大きいサイドスリット加工を施します。
------------ Related
to the previous -----------
ここにチューニングメーカーの440ccキットを組んだパワーチェックグラフがあります。
車輌ベースはTRX400ですが良い目安にはなるでしょう。
青線ノーマル:27.3PS 赤線キット組込:41.8PS
※キャブレター(形式・口径)&エキゾースト系不明:ノーマル使用と考えるのが妥当でしょう
この数値はリアホイル出力ですので ダイノジェットのロス率の係数は0.7
エンジン換算すると59.71PSとなかなかのモノです。
そしてパワーはかなり落ちていますが ピークエンドの回転数が10.500rpm と
良く回っています。(リミッターカットされているようです)
これらを踏まえれば 勿論↑上記車輌以上のパワーと回転が期待出来ることは確信しています。
=Caution=
このキットは 海外製の割りに シリンダーとピストンのクリアランスが適正で ノーマルパーツに比べコストもリーズナブルです。
ただし 落とし穴があり その箇所は製品によって様々です。
サイドボルトの位置や スタッドボルトの深さ 付属のガスケットは使えず そのままボルトオンと言う訳にいきません。
それぞれ適正かどうか 各箇所を点検の上 修正し組み上げなければなりません。
=END=