1970 JAF グランプリ 1970 5月3日

ツーリングカーレース

スタート午前11時30分 富士スピードウェイ6kmコース 20周 120km 出走37台


トリオで隊列を組むGT-R勢 これに果敢な戦いを挑んだロータリークーペ

この両車の対決は最終ラップまで続いた。


<プラクティス>

街中で見かけるセダンのレースは最も販売に影響が大きいと言われる。

それだけにこのレースに賭けるメーカーの意気込みはすさまじいばかりだった。

そんな背景からこのところ常勝スカイラインGT-Rに今年から国内レースに本格参戦をはじめたファミリア

ロータリークーペが真正面から戦いを挑み 事実上ニッサンと東洋工業の一騎打ちといった格好になった。

エントリーは全部で52台 このうちPMC・Sから参加していた本橋明泰、星野一義、歳森康師のスカイラインGT-Rは

大方の予想とおり補欠ドライバーとして登録されていたニッサン・ファクトリーの57高橋国光 58黒沢元治

59都平健二にそれぞれ変更されていた。

いずれもニッサンR380Vと同じタイプのルーカスフューエルインジェクションを装備して 

パワーも240PSを越えているといわれる。リアホイルには神戸製鋼製のマグネシウムホイルを初装着。

このほか最近メキメキ腕を上げてきた56箕輪真治が30日の公式練習中に自分のウェーバー付きGT-Rの

エンジンを壊した為 ファクトリーのインジェクション付きスペアマシンを与えられるという好運に恵まれ

これで予選に臨んだ。

これに対して広島の東洋工業ファクトリーからは 幻の天才ドライバーとまで言われた46片山義美と

47武智俊憲がペリフェラルポート式のロータリークーペを引っさげて富士に乗り込んだ。

ロータリークーペは このほかにも片山が主宰するチーム木の葉の50石原徳彦と51加茂進が

MSCC(マツダ・スポーツカー・クラブ)から48寺田陽次郎と49岡本安弘がエントリーした。

しかしこの4台は市販と同じサイドポート式で間もなく売りに出されるスポーツキットを装備した車。

トヨタ勢はTMSCかたパブリカ1200SLで9高橋利昭、10北原豪彦、11蟹江光正、mkエ晴邦、

14見崎清志のフルエントリーだ。

予選では昨年の日本グランプリに優勝した58黒沢(黄)がツーリングカーとしては驚異的な2分07秒47

(約170km/h)をマーク、ポールポジションを取った。2番目は予選終了15分前 黒沢に先導されて

タイムを縮めた56箕輪(白)。その右に59都平(銀) mkエ国光(赤)と並び1列目は

スカイラインGT-Rで占められた。46片山(白に赤のストライプ)は2分08秒37(約168km/h)で

2列目の左端に位置し 2列目中央にチームメイトの47武智のロータリークーペ(白に緑のストライプ)が並んだ。

ここまでが2分9秒台以内で 7番目の54杉崎直司(ウェーバー付きスカイラインGT-R)から下は

ラップタイムで3秒以上遅れている。

クラスVでは37石井和雄(トヨタ1600GT)が1位で予選12番手、クラスUでは14見崎(パブリカ1200SL)が

トップで17位のポジションを占めた。

決勝に進出した37台の内訳は----

T-Uクラス(1001〜1300ccまで)=トヨタ1600GTが6台、ベレット1600GTが2台の計8台。

T-Wクラス(1601〜3000ccまで)=スカイラインGT-Rが8台、ロータリークーペが6台の計14台。





<決勝レース>

予選を通過した37台のマシンが1台残らずスターティンググリッドについた。

午前11時30分 シグナルが黄色に変わると 37台のエキゾーストノートがひときわ高く響いた。

5・4・3・2・1。グリーンが点灯して全車きれいにスタートを切った。




1列目を占めたスカイラインGT-Rは ローギアをかなり高くセットしている為 ややスタート時の

加速が鈍い、すぐに片山、武智のロータリークーペに追いつかれた。

これを4台のスカイラインGT-Rががっちりスクラムを組んで抜かせまいとした。

しかし 右端の57高橋国光が少し出遅れたのをついて47武智と46片山が右へ出て高橋国光の前に立った。

そしてバンクへ飛び込んだのは46片山が最初だった。S字からショートカット分枝点は片山、

57高橋国光 59都平健二 58黒沢元治。やや離れて47武智、56箕輪の順。

しかし57高橋は100Rでアウトから片山をとらえ ヘアピンをそのままインについてトップで抜けた。


1周目のグランドスタンドは57高橋国光をトップに46片山、59都平健二 47武智 58黒沢元治

56箕輪のトップグループが通過。100mほど離れて50石原 51加茂のロータリークーペが続く。

クラス下の14見崎 9高橋(利)のパブリカは9位、11位についている。

2周目のヘアピンに姿を見せたときには57高橋国光が首位、2位に59都平健二、3位58黒沢元治

4位片山だが この4台はまったくダンゴ状態。


この周 後続グループを走っていた31川幡みきお(トヨタ160GT)が

フロントガラスを割ってピットインしてきた。フロントガラスが割れるという事故はこのほかにも5増沢照夫(カローラ)

17鈴木恵一(カローラ) 33種田(トヨタ1600GT) 43小森勝(トヨタ1600GT) 24吉本博雪(ホンダ1300)

らが見舞われた。いずれも2周目のバンク入り口で起こったものだ。原因については飛び石も考えられるが

ほとんどがフロントに合わせガラスを使っていなかった為 バンクに突入した時のショックで割れたようだ。

この6台にはブラッグフラッグが出され 5周目まで全部がリタイヤした。

トップグループのうち 3台のファクトリーGT-Rに割り込んでいた46片山が4周目に突然ピットに

滑り込んできた。左後輪がパンクしたのだ。片山のロータリークーペはトレッド幅がフロント10インチ

リア12インチのブリヂストンの試作タイヤを履いている。片山のピットインには12インチタイヤを

用意してなく フロントの10インチタイヤを付けた。20周のスプリントレースでは1回でもピットイン

したらすでに優勝戦線から脱落したといってよい。しかし片山は1周遅れでちょうどトップグループを

狙うようにピットオフしていった。ファクトリーロータリーで一人残った武智を援護する為 ひっぱり役

として再出動したわけだ。

この周のメインスタンド前は58黒沢元治 57高橋国光 59都平健二が一団となって通過

つづいて47武智 v・輪もよく。食い下がっている3台のファクトリーGT-Rは 各周 各コーナーで

攻守ところを変え まったく順位は定まらない。



7周目には58都平健二がトップへ躍り出る。その周のヘアピンでは黒沢元治がトップといった具合だ。

47武智と56箕輪の間にいた1周遅れの片山は ヘアピンで58黒沢元治と59都平健二の

間に割り込んだ。



ニッサン3者と片山はともに2輪あがりのベテランドライバー、“押さえ”とか“フェイント”など レースの

駆け引きの最中でも顔を見合わせて互いに“ニヤリ”と不敵な笑みをかわすといった場面があった。

まさに好敵手といったところ。プロフェッショナルでなければできない芸当だ。それはS字 ヘアピン

直線の各所で見られた。



トップのニッサンファクトリー3車に異変が起こったのは10周目、3番手についてヘアピンに突入した

57高橋国光はクリッピングポイント近くの最も横Gがかかる地点で右後ろのタイヤがバーストして

はじけとんだのだ。


流石高橋国光 何事も無かったようにそれをうまく建て直し 一瞬グリーンに

片足を落としただけで立ち上がっていった。しかし右後輪は完全にペチャンコ。ホイルだけで走って

車が傾いたままピットに入ってきた。その時すでに2周遅れ 高橋国光もまた片山と同じく

優勝戦線から消えたのだ。そしてタイヤ交換。2周後のトップグループに的を絞ってピットを後にした。

13周目のヘアピンでは58黒沢元治を先頭に59都平健二 次に2周遅れの57高橋国光が

割って入った。やや遅れて47武智 46片山がつづく。高橋国光はチームメイトの1位 2位を

安定させる為援護に回ったようだ。これをみてとって46片山はそれまでコーナーで武智を後押しし

直線ではスリップストリームで引っ張っていた作戦を変えた。猛然と前にいるニッサン勢を追い始めたのだ。

そして17周目から18周目にかけて57高橋国光と59都平健二を抜いた。しかし彼は1周遅れ

高橋国光もまた2周遅れている。この周片山はリアタイヤが左右太さが違うハンデを負いながら

彼自身の予選タイムを上回る2分7秒9をたたき出した。高橋国光も負けてならじと片山を追った。

最終ラップ58黒沢元治が最初のチェッカードフラッグを受け つづいて57高橋国光 47片山

少し離れて都平健二が2位でゴールラインを通過した。




順位争いこそ関係ないがプロの面目をかけた高橋と片山のデッドヒートにメインスタンドは総立ちでこの両雄に

拍手を惜しまなかった。

クラス下では14見崎 9高橋(利) 11蟹江のパブリカ勢が圧倒的な速さで1位から3位まで占め

総合でも10,11,12位に食い込んだ。

通算19勝目を飾った。

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優勝した黒沢元治選手の話

こんなに楽しいレースは初めてだ。チームメイトや片山選手とは競り合いながら窓越しに見て

笑いあったんです。ロータリーに勝つ自信はあったが予想以上に速かった。GT-Rは直線での

伸びがやや足りなかった。しかし足回りが良かったのでコーナーで稼げた。

片山選手がピットインしたのに気が付いていたのだが あとからバックミラーに写った時

一瞬 同ラップかと思ってドキリとした。(談)

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