ルーカス機械式低圧燃料噴射装置

日産ワークスマシンを語るにはルーカスフューエルインジェクションは欠かせない。

GT-Rは基より

先にR380(GR-8)から採用されR382(GRX-3)・R383にまでに至る。

‘69 8月27日 PGC10Rに投入

KPGC10Rの最後までS20型エンジンには必需品であった。

日産ワークスとしても常に最善のものを模索してレーシングマシンを作り上げてきた。

その中でもルーカスフューエルインジェクションが基礎になり実績を挙げている。

ただその詳細はあまり紹介されていない。

分かる限りの事を記してみよう。

------------------------------------------------------------

ルーカスフューエルインジェクション(1969 AUTO SPORTS記事解説)


気化器を使わずに燃料を直接吸気ポートもしくはシリンダーの中に送り込む方式は

メルセデス・ベンツ(ポッシュ式)の1950年代のレーシングカーにいちはやく取り入れられてきたが 

現在では一般の乗用車にまで採用されている。

いまのところまだ高価なため取り付ける車種もおのずから限定されているが メカニカルな面で

この装置の利点は数多い。例えば気化器の場合高回転になると混合気の供給が不調になる事があるが

燃料噴射装置では高回転時にもきわめてスムーズに燃料の供給が行われる。

また気化器の場合 急激なコーナリングの際サージングが起こるが燃料噴射装置の場合その心配は無い。

更に生産車に取り付けた場合は燃費も良くなるし 現在問題となっている排気ガスによる大気汚染防止にも役立つ。

もっとも それには燃焼室を噴射装置に見合った形式にしなければならないが・・・

ルーカス社が燃料噴射方式の開発を始めたのは 実は1940年の事だった。

当時イギリスでは世界初のジェットエンジンが開発されていたが この新しいエンジンの燃料供給装置と

燃焼システムの大掛かりな研究開発に ルーカス社も参加していたのだった。

しかしガスタービンの場合とは事情がきわめて違っていた為ルーカス社のディ−ゼル部門がもっていた

経験をそのまま活かす事は難しかったようである。

とはいえガスタービンエンジンに対する燃料噴射方式の研究は そのままガソリンエンジン(レシプロエンジン)

にも応用出来た。いわゆるレシプロエンジンがすでに限界に達したといわれていた時 

この噴射方式の採用により 更に大きな出力を引き出す可能性が出てきたわけである。

燃料噴射装置の基本的な要素は次の二つである。

ひとつは燃料を高圧で噴出するギアポンプが採用されている。

加圧された燃料は まずメータリング・ディストリビュータ・コントロールユニット(計量配分器)に送られる。

この配分器のスリーブの中にはエンジンの2分の一の回転で回る円筒形のローターが収めてあり

これによって燃料の配分を行うわけだ。スリーブには加圧ポンプ側からくる吸入ポートと マニホールド側に

繋がる排気ポートがあり 排気ポートが噴射ノズルに連結している。

燃料配分の仕組みをタイミングの面からもう少し詳しく説明しよう。

第2図で見るとおりローターは中空になっており 側面に穴が開いている。

この穴がローターの回転につれてスリーブ側の吸入ポートと一致した時燃料が送り込まれ

スリーブ側の排気ポートと一致した時に燃料が送り出される。これが燃料配分の仕組みである。

このようにして 燃料は各シリンダーに適正な時期に配分される訳だが 同時に燃料の分量を

調整する必要が起こってくる。つまり“計量の問題”だ。ルーカスシステムは極めて頭がいい

やりかたで問題を解決している。シャットルメータリングと呼ばれる方式がそれだ。

この“シャットル”は一種のフリーピストンで円筒形の中空のローターの中を左右に急速に移動する

構造になっている。ローターが回転するにつれて ローター側の穴が順次吸排ポートに合致するわけだが

この時上記のフリーピストンが左右に動いて 合致したポートから受け入れるとともに押し出してやる訳だ。

このフリーピストンを動かすのは電動式燃料ポンプによる高圧である。第2図を見ていただきたい。

スリーブ側の燃料吸入ポートがローター側の穴と一致すると ここから高圧の燃料が押し込まれる。

この時フリーピストンはローター側の一端へ押しやられる。(第2図A)

次にスリーブ側のもうひとつの吸入ポートがローター側のもうひとつの穴と一致すると 

今度はフリーピストンが反対側に押しやられる。

この時 ローターとスリーブの排出側のポートが一致するようになっているので 先に吸入した燃料が

押し出される。(第2図B)

これが吸入・排気の仕組みだが ローターの一端にはコントロールストップが設けられており 

これを調整する事によってフリーピストンの移動幅を加減し 噴射ノズルへ送られる燃料の量を

増減するわけだ。純粋のレーシング用エンジンにこの方式を採用する場合は コントロールストップを

動かすカムとアクセルペダルは直接連結されている。

ルーカス社の噴射方式はいわゆるポートインジェクションと呼ばれるもので エンジンの吸気ポートに

間接的に噴射するやり方だが この噴射ノズルは空気の流れの中で燃料を完全に気化するように

配慮されている。ノズルには一定の圧力以上になると作動するポペットバルブ(揚弁)が設けられているが

これによりシステム全体はつねに加圧下にあり さらに燃料が水滴状にしたたり落ちるのを防ぐようになっている。

全体としてこのルーカスの燃料噴射システムは ことにF−1マシンなどによってその真価が発揮されており

さらに将来は生産車にも大気汚染防止とも絡んで大幅に採用される事になるかもしれない。


=Webによる解説=

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日産ワークスでルーカスフューエルインジェクションについての記述はほとんど無いが

セッティングについてはどうだったのだろうか?

青地さんの文献にもセッティングが非常に難しいとかデリケートだとかはまったく触れられていない。

簡単では無かっただろうが 永きに渡って採用し続けたという事は

ノウハウは掴んでいたに違いない。

↑上記の記述にあるようにキャブでのチューニングの限界まで行っていて

更なるチューニングのアイテムがインジェクションだという事だ。

------------ Related to the previous -----------


1969 5月 杉崎直司選手のPGC10に装着された試作ミクニ製インジェクション


後に2018年モーターショーに試作品として展示されたミクニインジェクション

ワークスS20型エンジン

=END=