今年もまだ梅雨前だが夏日のような気温になってきている。

気温が30度を超えるとアイドリング時のバキューム計に変化が出始める、昨年から気がついた。

このHPに何度も書いてきたが ハコスカのエンジンルームに限らず クルマの構造上それだけ熱気が逃げ難いという証だ。

ましてバキューム計に明らかに差が出るほど 悪影響が出ている。


青地康雄氏著書より





     ワークスGTRはアルミ3層ラヂエター


空気密度は標準760mmHgで2度上がる毎に約0.6%づつ密度が薄くなっていく。

私のハコスカに取り付けているバキューム計ではアイドリング1.000rpmで4cmHg(40mmHg)も下がっている。
(エンジンルーム内温度55〜60度前後)

何故 これだけ吸入温度に拘るかと言えば 元々エンジンの圧縮状態を日々チェック出来るようにバキューム計を

取り付けた。エンジンをやり変えて随分経つが やはり長持ちして欲しいのでこういう計器があるのであれば

つけない手は無い。ずっと安定していたが昨年の夏 ふと気がつけば吸入圧力が下ちている事に気が付いた。

記録簿を遡れば7万キロ走っていた。その間オイル交換は怠らず2度ほどタペット調整も行った。

そろそろベスト(ピーク)の状態から落ちてきたのかと心を決めて今後に望まなければならないかと。

しかし一時的な猛暑を過ぎて吸入圧は元に戻った、心当たりはハコスカのエンジンルーム内の温度は非常に

高くなるのは把握していた。

そして青地さんの著書のはじめの方に吸気温度を外気温にいかに近づけるかを記してあったのを思い出した。

エンジンのパフォーマンスを充分発揮させるチューニング以前のいろはの“い”だからだ。

最近のクルマの吸入構造をランダムで見てみた。




メーカー問わず どのクルマでもノーマルレベルでエンジンルーム内の空気ではなく外気を取り込む構造になっている。

流石メーカー 製作したエンジンが充分パフォーマンスを発揮出来る初歩の条件だからだ。

なのに今の旧車のチューニングと言えば この部分にまったく気を使っていない現状に驚く。

私のハコスカだけがこの現象に見舞われているのだろうか、そんな話ではなく

どんなクルマもエンジンルーム内が外気と同じ温度なんてあり得ない。

ましてコースを走るような条件ではなく 一般ユースが大半の使い方だろう。

エンジンルームはラヂエターやエンジン自体が熱源なのでどんなクルマでもかなりの熱が篭る場所だ。

私の場合は数年前 キャブの不調があったせいで その原因がキャブレター本体が高温になり過ぎるせいだと思い

エンジンルーム内の温度を測定していた経験があるので 今の事に気がついた。

この職業についていろんなエンジンをオーバーホールやチューニングする中 

当然ファンネル仕様はエンジンを痛めるので私の中ではあり得ない。

吸入音がいいからと言ってファンネルを優先するユーザーは ハコスカを猿の腰掛として見ているか

よほどの無知なヤツだと判断せざるを得ない。

5万キロも満たない距離で圧縮は落ち オイル消費も増え 青白い煙を吐いているだろう。

いかに1年を通して安定した性能を引き出せるか“肝”になる部分なので 対策を講じたい。

コレが気になってから エンジンルーム内の熱い空気を外に出し温度を下げる為 タワーバーに電動ファンを取り付け 

エンジンルーム内の熱気を下に抜くようにして大凡十度以上は下がるようになった。(70度前後から60度前後に)


今年夏日が始まって外気温とエンジンルーム内の温度を測ってみた。

外気温30度を超える時 エンジンルーム内温度は55〜60度の間に達している。

毎回エンジン停止直後にボンネットを開けてキャブ間に配置した温度計を見るのだが 電動ファンが回ると

「熱っつ」と声が出るぐらいの熱波がラヂエターから引き出されている。

そんなにヘビーチューンしたエンジンでは無いけれど こんな基本的な事で私なりに良かれと思った部品を選んで

組んだ出力が充分発揮できていないのは エンジンをある程度イジってきた者にとってあまりにもダサい事(灯台元暗し)

他のクルマも同様だと思うが ハコスカは当時日産ワークスが吸入温度の管理を外気温に近づける事に

かなり苦労している(↑上記)。S20はクロスフローなのでエキパイの熱をキャブレターが直接影響は受け難いが

そのS20でさえ日産ワークスがコレだけ気を使った部分である、ということは高速で走っていてもエンジンルーム内の

温度がかなり高くなり ワークスエンジンの性能が充分発揮出来ない事は分かっていた。

同青地さんの記述にも「今日は気温が高いので富士のタイム更新は望めない」とあるほど影響があるという事だ。

対しL型エンジンはターンフローなのでエキパイの真上にキャブが配置されるので モロに影響を受ける。

私のハコスカはSUキャブ純正の遮熱板に加え 断熱シートでエキパイ全体を覆って熱気がキャブに伝わり難いように

しているが インマニとインマニの間にエキパイを挟む構造なので 出来るだけの対策をしてもある程度は

影響を受けざるを得ない。


N42ヘッド 
○吸入ポート □排気ポート


日産ワークスのGTRや240ZGは文字通りレース用でサーキットを高速で走るので外気を取り入れやすい、

比較的フロントパネルにエンジンルームに繋がる穴が多い240ZGでさえ 吸入温度に気を配るぐらい。

1973年5月 
:ラヂエター冷却導入口 :吸入ダクト導入口

ましてや我々のように一般道を普通に走る仕様はこのようなレースユースと異なり ストップ&ゴーを繰り返すので

もっとエンジンルームに熱が溜まるのは当たり前だ。

チューニングショップやプライベーターご自慢のハコスカ、GTRやGT改どれを見ても吸入温度に

気を使って工夫しているものを見た事が無い。L型 3・3.1リッターフルチューン OSエンジン S20など

大きく手が入ったエンジンでも“このレベル”が現状ですわ。

------------ reference -----------

ワークスGTRやワークスフェアレディ240Zに ラヂエター冷却ファンが無いのにお気づきだろうか、

無論 電動ファンさえ付いていない。

流石レース用 サメのようなもので 止まると死ぬ、

順調に周回している前提でロスになるものは省かれているのだ。

市販S20型エンジンはカップリング無し(リジット)のファン付き、

L型エンジンはカップリング付きのファンが標準。

ファンで引き抜くエアの量より 車速の方が速いので

このファンがあることで 高速時ラヂエターを通るエアの妨げになるのだ。

またファンが無い事で 素早い回転上昇(レスポンス)の向上が飛躍的に良くなる。

レース状況下では止まれば終わりなので 何かと邪魔になるので必要ないのだ。

S20型エンジンのノーマルはファンの取り付けがリジットなので 高回転ではかなりの

回転抵抗になる、L型と比べると外径が小さいが回せば回すほど回転抵抗が大きいのには変わりない。

ハコスカもサニトラも電動ファンにしているのでノーマルファンは付いていない、

電気モノは壊れると言うリスクはあるものの

このレスポンスに慣れると戻す気にはなれない。


またナンバー付きGTRやGT改に電動ファン装備以外で ラヂエターシュラウドが付いていないものが多く見受けられる。

シュラウドはファンの周りを囲う事でエアを引き抜く力を強くする。

S20にしてもL型にしてもラヂエターとファンのクリアランスは意外と大きい。

無いとなると走っている時はフロントから風が入ってくるのでまだマシだが 停車時はエンジンルーム内の

エアをかき回しているにすぎないので水温の冷却の効率はあるのと比べると大きく落ちる。

特に信号待ちなどの停止している時間が長いと水温がジワジワ上がっていく。

“R”にしてもL型にしてもラヂエターシュラウドが付いていないものが本当に多い。



な〜んも考えていないヤツがなんと多い事か メカ音痴にも程がある。


ラヂエターシュラウド付

------------ Related to the previous -----------

ラヂエターですが アルミコアと真鍮コアでどちらが冷却効率が良いか 論争がある。

あくまで私の経験で話すが アルミと真鍮 どちらも修理した事(熱を加える)がある。

アルミの方が格段に常温に戻る時間が早い。

また アルミコアで水温が高めだった頃に「真鍮の方が良く冷える」と言うのを聞いて

純正ラヂエター(コア増し)に戻した時がある。

以前より水温が上がった為 すぐにアルミに戻した事がある。

また決定的な事はワークスGTRは終始アルミを使っている事だ。
(73年240Zは真鍮コア使用)

私はアルミコアの方が冷却効果が高いと思う。

------------ Let`s get back to the story -----------

エンジンルーム内に熱源がある限り 様々な工夫を施しても

それを取り巻く空気の温度を下げるには限界がある。

そこで追加でせめてキャブの吸入空気の温度を外から導き吸わせる方式もありかなと思う。

その点“R”のノーマルはエアクリーナーの吸入口がエンジン下部から吸うようになっていて

「流石」と思ったほど。


エンジンルーム下の空気をエアクリーナーBOX吸入口付近に圧送する仕組みを考案

------------ At the same time -----------

今までは普通の温度計で測定していたが この際専用のセンサー付き温度計を新調し

↑上図の位置にセンサーを設置した。
(高さはキャブ吸入口でツインキャブの間)

室内にメーターを設置出来るのでタイムリーな温度変化が見て取れる。

同時にアンダーカバーも外して 付けている時のエンジンルーム内の温度変化も比べてみよう。

↑上記のエンジン下から外気をエアクリーナーBOX吸入口に送るのは期待出来そうだ。

でも梅雨だけに長期予報を見ても1週間は雨が続く予報なのでしばらくはお預けだ。


※純正アンダーカバーの有無はエンジンルーム内の温度には関係ないようだ。

------------ Separate case -----------

もうひとつ気になっている事はガソリンだ。

ヤフー知恵袋で夏の猛暑にガソリンタンクも暑くなり“沸騰”しているのではないか

というのがあった。その人が言うには沸点は40度なので・・・ と。

こういう文系のアホが居るので困る。

ガソリンの沸点は35〜180度とされ範囲が広い。

質によって変わると言うものだが 猛暑程度では問題ないという事だ。


昔 ネットでガソリンを冷やすクーラーがある事を見ていた。

たまに買っておけば良かったと思ったが デリバリーのルートを辿ってみると

ヒューエルタンク ⇒ ヒューエルポンプ ⇒ キャブレター

設定するとすればヒューエルポンプとキャブの間だが

問題はキャブレターだ。

誰もが普通に走行したエンジンルームのキャブレターを触った事があるだろう。

熱くて触れたモンじゃない。

どんなキャブレターでもベークライト(断熱材)を噛ませて取り付けてあるが

スタッドボルトからヘッドの熱が伝わる。

キャブボディ内にフロート室がありボディ一体の構造だ。

キャブに送り込まれたガソリンは即座に消費される訳ではないのでフロート室滞在中に自然と温まってゆく。

パーコレーションを起こさなくても「霧化」は温度が高くなればなるほど促進される。

おそらくは通常でも“人肌”よりは高い筈

またはリアクション芸人の熱湯風呂よりも熱くなっていると思われる。

SUキャブは別室で別れていてマシなような気もするが

ソレックスやウェーバー・OERなどはその影響が強く出るので季節や気候によって調子が変化しやすいのも理解出来る。

ガソリンが暖かくなるのを防止する事は構造上難しい。

この条件下でのセッティングなのだ。


プラス 画像のようにデリバリータンクの取り付け方によればもっとガソリンは温まるだろう。

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レースカーなどを見るれば 外気をダイレクトにエンジンの吸入口に導くのは当たり前に配されており

チューニングされたエンジンのパフォーマンスを100%発揮出来るように配慮してある。

反し そこら辺のハコスカGTR L型エンジン系搭載車 86系および旧車と呼ばれるクルマを見る限り

あれこれ薀蓄を垂れるチューナー、○○フルチューン?

この初歩的なところの対策はまったくのスルー

------------ Wait a little time -----------

今日は珍しく朝から曇り空でお昼の気温も31度であった。

バキューム計を見ればいつもの50cmhgに戻っていた。

暑いうちに準備しておいた施術を施し効果を見なければ。

------------ plus -----------

エンジンルーム内の温度も45度までだったら通常のバキュームの数値を示す事が分かった。

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Webのなかでこんな車両もあった。


ココにダクトを配している↑


おそらくココから引いていると思われるが

前のパネルがあるのでダイレクトにはエアは入って来ない。

何もしてないよりはマシだと思うけど こんなモンじゃほぼ効果は無いだろう。


私のようにダクトを設けた方がまだエンジンルームへのエア導入は大きいだろう。


=END=