以前 同時期に二人のMD30 十万キロノーO/H車がそれぞれ不調を訴え
最期の「駆け込み寺」ヴァイタルに相談があった。
1台はアイドリング不調で来たのですが 私も話を聞いてキャブ調整で治るだろうと思っていたが
話を一歩踏み込んで聞けば確実に十万キロ以上は走っていて(メーターが途中で壊れた)
オーバーホールはやって無いとの事。
もうコレはキャブの問題ではなく エンジン自体の圧縮が無くなっているので
キャブとのバランスが崩れて不調が表面化したのだと説明。
数万で治ると思っていたユーザーは クランクまで逝っていると思われるので
全バラで30万は掛かると通告。
車体を見るとあちこちのボルトが抜け落ちていたり サビがひどかったりで
普段メンテもやっていないのは明らかだった。
不意打ちを食らったように動揺して帰っていった。
今まで何にもしなくて乗って来れた分 有難く思わなきゃ。
このユーザーはもう来ないだろう。
もう一人県外からわざわざ来られた、本気度が伺われる。
目の前で腰上までバラして どれだけヘタっているか見てもらうために
作業に取り掛かった、30分もあれば十分だ。
シート・タンクまでは良かったが 通常マフラーを外さなくてもエキパイだけ外れる。
しかしエキパイのフランジボルトに手を掛けた途端 ボルトは折れた。
もう1本はスタッドぐち抜けた。
しかしエキパイとマフラーのジョイント部分が固着して エキパイが外れない。
仕方ないのでマフラーもボルトを緩め エキパイをヘッドからずらした。
ヘッドのマウントボルトもカッチカチ
異様な音を立てて緩めていく。
ヘッドカバーの6mm締め付けボルト13本中 エキパイ側2本が下に貫通しているので
サビによる固着が見られ 1本は何とか外し もう1本はレンチを掛けた途端簡単に折れた。
カムには巣は出ていたが 思ったほどひどくは無かった、しかし要交換。
ヘッドの締め付けスタッドボルト10mm4本 そのうち1本はプラグの前で外に出ている。
他3本はカッチカチだったが何とか外れた。
ボルトを痛めない為 ソケットレンチはすべて6面を使っている。
プラグ前の10mmスタッドボルトにソケットを刺したら 頭が錆びてボロボロになっていて
ガタが大きいのはすぐに分かった。
一発で緩めないと頭が舐めてもうソケットは効かなくなる。
久々にボルトの滑り止めのペーストを塗って 工具が上に逃げないよう治具を当ててやってみた。
鈍い緩み音のような音がしたので緩んだと思ったが頭がボケた。
その時2時間は掛かっただろうかもう暗くなりかけていた。
ユーザーさんに「今日はもうこれ以上バラせない」と告知 帰ってもらった。
どれだけ中身が傷んでいるか見て欲しかったのだが・・・ 残念だ。
ただ どれだけ圧縮が落ちているか体感してもらう為に
当店“シュラウド佐西号”のクランクを回してもらい 自分のバイクの回す重さを体感してもらいました。
佐西号は上死点あたりは硬く ユーザーさんのMD30は抵抗無くスルスル回るものでした。
後日 舐めたボルトを外す為に作業性を考えエンジンを下ろす事にした、工具が入らない為だ。
マフラーとエキパイを分離させるのに手間取る、ココもガッチガチ。
スィングアームのシャフトが固着して外れないのではないかと懸念されたが ココは意外とすんなり外れた。
クランクケース前側の10mmマウントボルトがカッチカチで外れない。
とりあえずボルトというボルト ナットというナット、ココまで固まるものかと・・・
永い事やってきたが ノーメンテバイクはこんな事になるとは 始めてかもしれない。
なにかと要らない時間が掛かりエンジンを下ろすのに二日掛かってしまった。
そして肝心な錆びて痩せ細った頭が舐めた10mmスタッドボルト
どうやって外すか。
綺麗に外さないと部品が無いので(シリンダー) 慎重を要する。
昔雑誌のコラムで 「腕のあるバイク屋さんは折れたネジをいかに綺麗に外せるかが目安だ」 と書いた事がある。
最近このような事例が少ないだけに どうしたものか、
長期にメンテを怠るとこんな事になるのかと 思いもしない事例の連続。
結局なんやかんやで三日を要し 雌ネジを崩さず外す事が出来た。
シリンダーの壁面は大きく凹み(上下死点) これでは圧縮が保てるわけも無く、
問題はクランクだ。コンロッドが横に大きく動くほどガタが出ている。
全バラ決定。
腰下のネジ類が怖い
閉める時に折れたボルトはまだやり易いが 緩める時に折れたボルトが厄介なのだ。
ふと思ったことに
地元のホンダショップがこの仕事を請けたとしたら この難題をどう処理するのだろうか。
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