私が新卒で大手安売り販売メーカーに就職し ある県に第一号店として新規店舗を任され飛ばされた。(店長)

メイン幹線道路に面した立地で 道向こうに白バイ交通機動隊の詰め所があった。

お昼にはお店の前を昼飯を食う為に職員が徒歩で通るのが日課だった。

昼食後 必ずといっていいほど職員たちはバイクを見て行った。

当然買うお客さんではないものの 声を掛けて懇意になった。

近くの河川敷で極稀にその交機隊がダートの練習する時があった。

その時は20人ぐらい大挙して来ているので 私などが練習する余地など無い。

パイロンを立ててスラロームだったり 仮設のコースを走ったり と・・・

まさにスパルタ 軍隊のような指導振りだった。

見ていると実に奇妙なライディングホーム、トライアル車(TL系)で何処を走るのもスタンディング。

そんな風景を見ていただけに その交機隊の人に「モトクロッサー 乗った事ありますか?」と聞くと

どうやら無いらしい。

休みが合えば今度バイクを用意するので乗りに来ませんか と言うと すぐには返事は無かったが

「是非乗せて欲しい」ということで その機会を得た。


当日3台程のモトクロッサー(2スト125 2台・250)を用意し河川敷に行くと 5人ほど交機隊の人が待っていた。

その内3人は全国大会の県代表だった。

もう細かい説明も要らない すぐに乗り始めた。

やはり オフを乗るには実に奇妙な乗り方

私はXR200Rで割り込んでいって 数周のうちに全員ラップした。

“白バイ乗り”というのがあるのは分かりますが 今日はリセットして本来のオフロード乗りの基本をレクチャーした。

すると流石 職業にしているだけに飲み込みが早い、みるみる速くなっていった。

「流石ですね」と言うと やや照れながら「一般の人よりバイクに乗っている時間が長いので当たり前だ」と言われた。

流石に1日では互角に・・・ までには行かなかったが見違えるように速くなった。

オフに特化したバイクに始めて乗った感動がかなりインパクトがあったようで感心しきりだった。

軽さ・スリムさ サスの良さ パワー どれも異次元の体験のようだ。

こんな事がキッカケでお昼にはオフロード談義に花が咲くようになった。


ある日休みの日にクルマ(当時フェアレディZ)で移動していたら 後ろで白バイがカンテラ点けて

「前のクルマ 止まりなさい」と言うでは無いか、違反などしてないはずだが・・・

クルマを路肩に止めて白バイ隊員が近寄ってきて「田口さん びっくりした?」と言うでは無いか、

なじみのあの人だった。勿論冗談でびっくりさせたかったようだ。

「冗談きついわ〜」と胸を撫で下ろした事を思い出した。


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