=ヴァイタルマフラーの歴史=


ユーザーさんとの話の中で 最終のヴァイタルオリジナル Powerd Mufflerの話になった。

エンジンチューンを活かすも殺すも 最終は排気系が決め手となります。


オリジナルマフラーに手を付ける前は WBメガアロイを好んで使っていました。

フルエキゾーストを装着すると「ケツを叩かれた」かのようにめちゃくちゃ良く走った印象がある。

しかし音量でレースにも使う事が出来なくなった経緯があります。


先代社長が居る時にヴァイタルにもオリジナルマフラーがあった。

あるショップと共作としてそのマフラーが出来上がった。

ヴァイタルが図面を上げ そのショップが製作してくれるところを探したと言う経緯のものだったので

○○オリジナルマフラー(ショップ名)と固有の名前を付けるのを止めようと合意していた。

オールアルミ製で まるまるメガホン構造、サイレンサーはXR純正を取り付ける方式だった。

当時純正サイレンサーはФ30・28・23 そして使いモンにならないФ10と全4種類、

当然ウチでは抜けの良いФ30を装着して販売していた。

オープンエリアではサイレンサーなしで走るととんでもなくダイレクトのパワーが出ました。

しかし音は爆音

重量:ジャスト1kg 激軽でした。

ある日オフロード雑誌からオファーがあり 各ショップのオリジナルマフラーをパワーチェックすると言うものだった。

一応協作なのでそのショップにその旨連絡を入れると

「ウチが雑誌社に送る」と言って引かなかった。

私より年上なので顔を立て ウチは引いて そのショップにお任せした。

1ヵ月後 雑誌が送られてきた。

記事を見ると 顎を落とした。

そのパワーチェックグラフはノーマルを大きく下回っているものだったのだ。

画像を見るとテールのサイレンサーには一番小さいものが付いていた。(Ф10mm)

コレではパワーが出るわけが無い

このショップはメカに疎いのだ。

それにマフラー中央には大きなそのショップのステッカーが貼られており

説明文には末尾に「なおヴァイタルでも同様のマフラーを扱っている」との記述・・・

それ以来ぱったりと売れなくなった、

当たり前だ ノーマルを下回るマフラーなんて買う訳が無い

そのショップの自爆案件であった。

先代社長の進言で「あの人には気をつけろよ うまく利用されるから」と。

同時進行でオリジナルカムシャフトもあった。

モノは良かったが コレもあのショップのお陰で“自爆”・・・ 終了となった。

それから共作はやめた 懲りた。


それからある程度時間が経って 以前から気になっている海外製マフラーがあった。

特にオーストラリアンサファリでは定番 ホンダワークス・カワサキワークスの車両についていたエキゾースト。

雑誌の記事にはメーカーのオリジナルマフラーと紹介されていたが

実は「ステンチューン」と言うオーストラリアのマフラーが付いていたのだった。

好機が訪れ日本で始めての輸入となった。

幸い 騒音規制がオーストラリアと日本の保安基準が同じであった為 そのまま販売出来た。

始めは日本のオフロード業界ではなじみが無い為 緩やかな出足であったが

すぐに予約開始から1時間ほどで完売状態が3年続いた。

そしてある日から マフラーが入らなくなってきたので問い合わせると

販売の権利を東京のショップが金の力で買ったらしい、

そのショップはロードのビッグバイク専門店だった。

ロードではまったく実績が無いので売れるわけも無く 不良在庫を多く抱える事になるだろう。

その経緯はココでは割愛させてもらうが(YSPが絡んだ腹黒い工作だった)

丁度「ステンチューン」の構造が従来のメガホン構造をやめ 短絡的な量産型に変わった、

見るも無惨な性能になった時なので 未練も無かった。


また人を通じてマフラー製作業者を紹介された。

「ステンチューン」の構造をベースに もっとパワーが得られるよう図面を書いた。

見積もりが上がり とりあえず10本初期ロッドを注文、

2ヵ月後出来上がって請求書が来た。

元の見積の倍以上の金額が書いてあった。

理由を聞くと 「こんな複雑なマフラー作ったことが無い」と言う 理由にならない理由だった。

何の為の見積か!

それに製作するに当たり構造がシンプルになるようにパーツ点数を少なくしたにも関わらず・・・

要は今でもそうだが パイプをぶった切ってパンチングのパイプを中に通し

ウールを巻いてフタをするという 実に簡単なマフラーしか作ったことが無いのだ。

その10本はすでに完売しており 大きなお金は動いたがまったく儲けは無くなった。

お世話になっている人が間に立っていたので その人の顔を立て文句は言わなかった。

勿論 その10本で終了。

コレがPowerd Muffler Mk.Tだった。


その間当店初のワークスマシン RVF-Rを手掛けており 排気系は手曲げの左右独立した

デュアルマフラーを採用した。

左右独立した構造は トルクが低速から太り フラットなパワー曲線を描く特徴がある、

トルクの谷が出来ないのだ。

音量規制が無かった時代なので モトクロッサーのサイレンサーの中身を繰り抜いて

メガホン構造に作り変えたマフラーだった。


フラットで良く回った事を覚えています、勿論無茶苦茶軽かった。

RVF-Rシリーズは3台通しても車重:100kg前後だった。

今の4サイクルモトクロッサー250よりも軽かったのだ。

このマフラーはRVF-Rシリーズ RVS-Rまで一環して採用し続けました。

------------ continuation -----------

ウチもマフラーだけでなくエキパイ(ヘッダース)を作りたい構想がかねてよりあり 図面はあげていた。

ウチでは当時2ストモトクロッサーを相手にレースをしていたので

レスポンスを重視したチューニングを行っていた。

排気系はエキパイとマフラーに別れ それぞれ役割を持っている。

より特化した性能に引き上げる為 ヘッダースの役割は重要なのです。

低速からのトルクアップとレスポンスと吹き上がりを重視した設計。

そこで重要なのはステンレスパイプを鋭角に曲げられる「曲げ屋」さんを探していた。

当時はタウンページがあって三店に絞って問い合わせをした。

いずれも「何でも曲がられる」との回答があり ノーマルエキパイをもってその業者を訪れた。

現物を見て「こんな急に曲げる事は出来ない、パイプが潰れるか 割れる」と言う事で三店とも断られた。

折角実際動けると期待したのだが・・・ 不発。


しばらくオリジナルマフラー不在の中 4サイクルモトクロスに参戦するようになった。

年間5戦開催

私が新卒の頃 同じ講習を受けた見知った人がお客さんを引き連れてレースに参戦していた。

当然バイク屋をやっていると思っていて 挨拶する程度で話し込む事は無かった。

1年以上は経っただろうか たまたま長く話すことがあり

ちょっとマフラーには詳しいので 「まるでマフラー屋みたいやね」と言うと

「マフラー屋ですけど」と言うでは無いか!

詳しくは言わなかったけど結構手広くやっているようだ。

通常マフラー製作を依頼すると最低ロッドがあり百本単位が通例

そこまでの資本力は無いので 小ロッドで小刻みに頼みたい と言うと

大手の依頼で忙しいので小ロッドが有り難い という事で利害関係が一致した。

以前から暖めていたエキゾーストシステムの図面を渡し 見積をしてもらった。

その業者から実際曲げたサンプルが送られてきて その中に見覚えのあるパイプがあった。

「お宅 ○○(メーカー)のエキパイ作ってんの?」と聞くと 「良く分かったねぇ〜」 と。

実はオフロード国産マフラーの8割はウチで作っている」と言うでは無いか!

図面をみて結構複雑だと言うので意外だった。

プロテクターを付けたくなかったので エキパイのラインをシリンダー側にビッチリ寄せるので

よほど曲げが難しくなるのは分かっていた。

話を進めていくうちに シングルのエキゾースト構造を知らない事に気が付いた。

使用するパイ数 接合する距離 全長がどう影響するか マフラーの容量

立ち上がり角度や絞りの角度がナニを意味するのか など まったく分かっていなかったのだ。

やはり多くはパイプをぶった切ってパンチングのパイプを中に通し

ウールを巻いてフタをするという 実に簡単なマフラーが主流との事。

「大手の依頼も大変だろう」と聞くと その大手は図面を送ってきて作るのではなくて

「今度○○と言う機種が出るので 作っといて」と言う マフラー屋に丸投げの依頼だというのだ。

それでは良いマフラーが出来るわけが無い。

意外な内幕が知れて 所詮こんなものか と失望した。 ⇒ 他言無用

そんな事はさておき まずはヘッダースを作ることになった。

精度が高い作り方と コストを下げる“造り”がある(外品はコチラが主流)の言うので

勿論 前者で依頼した。

そうして数ヵ月後 ヴァイタルオリジナルヘッダース第一号が出来上がってきた。

この形状が特性を表しており レスポンスに特化したものになっています。(詳細はGoodsを参照)

30本ロッドで製作 予約を頂いたユーザーさんに速攻デリバリー

意外と取り付けたユーザーさんからメールを頂いた。

「エキパイだけ変えて 違いを体感したのは初めて」と言うものが多かった。

勿論その為に作ってこのフォルムになっているので コチラにとっては当たり前の事、

それだけ巷に溢れているエキパイは体感しないモノが多いという事だ。

嬉しいような 悲しいような・・・

余談:ウチのヘッダースが手に入らない場合 変なエキパイを買うぐらいならマシなモノを推奨した。

するといろいろなユーザーさんの声を聞くと 「同等」と理解しているらしい事が判明。

いやいやいやいや その推奨品も体感は期待出来ないモノです。

あくまでも「マシ」なモノレベルなのです。

年二回 30本単位で製作した。

嬉しい事に 予約受付と同時に30分で完売という盛況ぶりだった。

我が試乗車“シュラウド佐西号”に装着していて気が付いた。

ステンなので焼け色が付く 多くのエキパイはヘッドから5cmぐらいが極端に真っ黒に焼ける。

ウチのヘッダースは出口から20cmぐらいまで 緩やかに焼け色が付いている。

コレはナニを意味しているか

排気の流れがスムーズだと言う事を意味している。

排気抵抗が大きい部分に熱が集中するので その部分が焼けるのだ。

コレはマフラー屋の腕が良いと言うことだろう。

勿論内側から溶接部分を見ても一切“バリ”などは無い。

後ろの差込部分も精度が高く ガスケットも噛んでいないのに排気漏れは無い。

主力は250用だが 問題は我が400にも取り付けたいのだ。

250用は寸法が違っていてボルトオンでは付かない・・・

マフラー屋に別途400用を依頼すると また高額になってしまう。

そこでウチで個別に250用を改造して400用に造りかえる事に成功、

泣きながら治具を作った。

実際400用ヘッダースは5本程しか作っていない 今となってはレア品なのです。

------------ continuation -----------

ヘッダースが出来て2年ぐらい経っただろうか マフラー屋から連絡が入った。

「出来たよ」と。

私が「ナニが?」と聞き返すと

マフラー要らんのかいな と言うでは無いか!

特に督促もしなかったが すっかり忘れていた。

市販する限り法的にクリアしているものでなければなりません。

試作品で 排気音の問題があるのでテールピースを3種類 入替え出来るカタチで作ってもらった。

ひとまず私が理想とするテールピースを取り付け 騒音測定する事にした。

マフラー母体はまるまるメガホン構造で仕切り板も無く 消音する部分は無いのです。

そのピースは一番パワーを出せるモノで規定値を超えてくると思っていたので その他2種類排気抵抗になるが

音量を下げるピースだった。

本来は騒音測定する為の部屋でやるべきですが あえて雑音がある野外で測定しました。

近接法の測定器も持っていたのでエンジン暖機後測定。

エンジン回転4.500rpmで固定(本来XR250の場合4.300rpmでOK)

測定値:90db

今の法令では95db以下 (レース値も同様)

フルパワー仕様で規定値以下の数値でした。

消音効果はそのテールピースにあり 且つ パワーの秘密はその絞り角にあるのです。

アイドリングでバイクの後ろに立つと 排気エアの塊が顔に飛んでくる、メガホンならではの特徴なのです。

以上の結果により幸運にもフルパワー仕様で量産に入れた訳です。

WBのメガアロイがあった時代に テールにはオプションでオープンエンドというピースがあって それに入替えるとパワー曲線が無茶苦茶シャープになるのです。そのテーパ角がその特性を変える事も知っていた。旋盤でその絞り角が違うものを数種類作ってどれが一番パワーが出るか試した事があるのです。勿論その角度をこのテールピースに活かしたのです。

400・250兼用で寸法を決め 中速から上の回転域をシャープに延ばす役割があります。

消音材を使っていないので経年変化による音量が大きくなる事はありません。

マフラー重量:1.5kg

Powerd Muffler Mk.U〜V(ロッドの時期別)

約2年間 年2度生産(ワンロッド:30本)


完成に至るまでかなりマフラー屋に無理を言った経緯があります。

マフラー本体の前後にテーパの部分があります、ソレを作る為に

「鋳型を作らなければならない」というので コレは金が掛かる、

かなりの数を作らなければペイ出来ない。

そこで聞いてみた 「ベンダー持ってる?」と。

あるというので 申し訳ないがジュラ板で曲げられる一番厚い素材を使って欲しいと。

そのベンダーも手動なので2mmが限界だと言う。

手間が掛かるのは申し訳ないがコストを下げるのに手で巻いてくれと頼み込んだ。

かなり渋られたが快諾してくれた。

後に言っていたが あのマフラー作るたびに胸囲が2cm増えるんだ と。

薄い材料を使うと 反響して音が高くなるからだ、チャンバーのように。

厚みとしては十分

「ところでヴァイタルのロゴを入れないのか」というので

これ以上コストを掛けたくないので要らないと言ったのだが

今まで作ったマフラーの中でウチほど飛ぶように売れた事は無いと言う

ソレが嬉しくてマフラー屋がサービスで作ってくれた。

マフラー屋に様々なご苦労があって出来た まさにハンドメイドの逸品なのです。

こうしてヘッダース&マフラーのエキゾーストシステムが完成しました。

もともと私がレースに使うのに作ってみたかったヘッダースやマフラーなのです。

作ってみて世の中のニーズとして「足らないぐらいが丁度いい」と思っていたので 

売れるからといって量は作りませんでした。

実質 マフラー屋が小ロッドで仕入れていたマフラー本体の材料が

問屋さんが大手に吸収合併されたせいで 千本単位でないと受けられない事態になって

Powerd Muffler は短命で終わってしまったのです。

良い物が出来た時に限って 何らかの原因で短命に終わる、

ウチのジンクスのようです。


今までチューニングしていて ユーザーさんに良く聞かれました。

「静かで高性能なマフラー ありませんか?」

私は即答する「ありません」

性能を求めれば海外品になる 規定が10db高く抜けが良いのだ。

国内のJMCマフラーは音量を低くするのでフン詰まり・・・

どちらかを選んでください と。

特にウチはPJキャブが主体なので マフラーいかんでジェッティングが大きく変わるのです。

海外モノはフルパワーのジェットを入れられるが音が煩い

国内モノはフルパワーのジェットだと被って走らないので絞らざるを得ない。

Powerd Muffler が始めてフルパワーのジェットが入り

音量をクリアした唯一のマフラーであったのです。


To be continued.