この度作るMD06の使用目的は レース用ではなく 一般公道走行目的ですが出来るだけレスポンスの向上と
スムーズな吹き上がり 力強さを引き出し 保護面では良い状態が維持できるようロングライフ化を目指す。
・クランク・・・クランクベアリング、大端ベアリングのガタ、小端ベアリング、コンロッドの点検確認を実施。
※ 古い200系エンジンは低回転では振動が少なく、回せば回すほど振動が出てくる。高回転での振動は回転上昇を
抑えると共にピークの回転数まで押さえ込んでしまう、この振動がまた多方面にわたり悪さをする。新型XLR200系は
この振動周期を逆転させ 低回転で振動を出し高回転では振動が無くなるようクランクウェイトの配分を変更してある。
2次バランサーが無く クランクのみの単気筒は完全に振動を消す事が出来ない、低回転で振動を出しても悪影響は
少なく、回転の上昇と共にその始動が消えていく事で更に高回転化も可能になりクランクに与える負担も少なくなる。
今回はクランクウェイト加工にセンター出しを行い、ベアリングも新品に交換する。幸いにもクランク大端ベアリングの
ガタは無く、小端も良好。
・ミッション・・・ギアの当たり面 荒れ、バックラッシュ、ドッグの磨耗が無いか確認。シフトフォークの磨耗 曲がりチェック。
必要であればベアリング類も交換しておく。
・オイルラインは慎重に清掃して欲しい、小ゴミでもオイルポートが詰まる可能性があります。
↑ ・ケースを合わせますが センター出しを行った場合、すんなりL,Rケースが合い面まで入る。
合わず途中で引っかかるものは逆にクランクのセンターがずれていると思ってもらって良い。
オイル漏れがあってはならないのでセンターのガスケットにシリコンガスケット(強強度)を塗付する。
・クランクケースのボルト類には 緩み止めのワッシャ(ステンレス製)を配した。↓
↓ ・エンジン寿命を延ばす為のカナメ 勿論オイルポンプは大容量型のものを使う。
・シフター カムの磨耗もチェック。
・クラッチ側のパーツはすべて無かった為 XR200R(ME05)のものをチョイス。
・クラッチディスクは勿論 FCCを選んだ、クラッチセンターにオイルが良く分布するよう(冷却)ポート数を増やす加工も。
↑上左図のクラッチスプリングを押えているロングボルトは クラッチバスケットにクラッチASSYを入れやすくするための
工具で ウチで考案しました。これは200に限らず 同じ構造のものにはすべて使え作業が非常に早く出来るように
なります。右図 クラッチスプリングにも一応向きがある、上から見て塗料が多く見える方に組む。
・ノーマルクラッチカバーにはタコメーターのギアが入っていて 強化オイルポンプに干渉する為 この際XR200R
(ME05)に交換し 腰上はXLR200R(MD29)を移植する為 オートデコンプカム機構を廃止しデプコンで
埋めておく。↓
↓ フライホイル側にカムチェーンを付ける、チェーンも向きがあり塗装面を見える方に向けてつける。
腰上をXLR200R(MD29)を移植する為カムチェーンテンショナー機構は取り除き チェーンガイドは新型の
簡素なタイプに交換する。
↓ XL200、XR200系はヘッドのカムの延長上にパルス機構が付いていますが カムはエンジン回転の半分で
遠心式のメカニカルな進角方式によりガタが多く 点火のタイミングの確実性を高める為に今の主流方式で
フライホイル側で検知するタイプに変更する(現在生廃)。また パルサーの前を通過するスピードは速ければ
速いほど火の飛びが強くなる傾向があるので。同時にフライホイルもセットで交換しないとならない為 勿論
軽量化は行っておく(私の場合は出来るだけ軽くします)。
・もともとの旧200系カムチェーンテンショナー方式はマニュアル式でその都度調整しなければならない、朝調整しても
その日の夕方にはテンショナーノイズの”チャカチャカ”音が出ます。そこでそのわずらわしさを解消したい為シリンダー
にテンショナーが付いているタイプを採用。
また 冷却フィンの面積も大きいので一石二鳥、空冷は表面積が命。
しかし シリンダー長が長いため 同寸法にする為 旋盤加工が必要だ。それとスリーブボアが小さい為ボーリング加工
も行う。2ストの場合 ピストンクリアランスを合わせるため純正でA,Bなどのサイズ合わせがある、4ストの場合は
その設定はほとんどありません、選んだものが相性が悪いとピストン シリンダー寿命に影響します。その不安を払拭
する為に規定クリアランスにボーリングし それを確実なものにします、勿論 ボーリングは超細密加工。
・ピストンは 今は無き 純正オプション鋳造ハイコンプピストンを採用。
ロングライフのカナメ コンプレッションスリット、サイドスリット加工を施し ピストンピンのオイルポートにもより多くの
オイルが行くよう面取りをする。また ピストンピン内が独立した空間を持たないようにピンサイドに穴を施す。
ピストンピン内が独立した空間を持った場合 高速ピストン運動時にエンジンストールした場合 ピン回りが溶ける
ほどの高温にさらされる事があるからです。
そして ノーマル潤滑方式ですがヘッドのオイル溜めにカムを浸しつつ カムのオイルポートからも
オイルが出るようになっている。しかし 主力はベアリングの隙間からオイル溜めに行く方がほとんどで
オイルポートからは補助的な配分である。過去このオイル溜めの方式で苦い経験が有ります。
XR100も同様の方式です(カムオイルポートは無い)が チューニングでカムの回転が上がり過ぎ
逆にカムシャフト自体がその速い回転により オイル溜めのオイルを飛散させ かき出してしまい
ロッカーアーム、カム共に焼き付いてしまったのです。出来れば カムポートを主力でオイルを供給し
その飛散したオイルがオイル溜めに溜まりカムを浸す方式に変更したい。250cc以上は カムポートのみで
潤滑していて高速回転まで追従している、それに加え カムがオイルに浸かっていれば鬼に金棒です。
そのような形式に変更するには カムホルダーの反対側のベアリングをシール付きにすれば実現できる。
その加工を施したものが↓図です、また強化オイルポンプ導入に伴い ヘッドオイルポートも拡大化しておく。
↓ INポート ↓ EXポート
新型ヘッドはポート形状も良いのだが バルブガイド付近の無駄肉が大きく、折角のポート面積を台無しにしている。
これを改善したい。↓
※ 要注意はEXポート、削りすぎるとすぐ穴が開いてしますのでご注意下さい。
・シリンダーを組む際 バルタイを取る為ピストンの上死点をゲージにて測定しマーキングをしておく。
↑そして ヘッドを規定トルクで締めた後 カムタイミングを合わせます、この時カムホルダーが圧入式ですので
ベストの位置でバルタイを取り、合わせます。
↑キャブ変更に伴い インマニを差込み式のものに変え ポート内の段つきも除去。
XL200Rなどの古いこの形式のエンジンは キックギアが弱いと分かっていたが 今回バラしたエンジンは
程度が良くミッションなどは綺麗であった為 気を付けていれば問題ないだろうとそのまま組んだのでした。
(本当は程度が良かったのもあるが このエンジンを作る為にここまで大変な費用が掛かっていた為 ついついケチってしまったのもあります)
まあ良いだろうと気にかかってはいたが迷いながら”まぁ いいかな?”と言う場合は 過去の経験より 交換しておいた
方がまず間違いない。今回も例に漏れず そのキックギアがすぐに欠けてしまった。200の場合キックラインはクランク
ケース内に有るので全バラだ。この手のキックギアはピッチが細かいので掛けやすいのだ、当然 対策のキックギアは
ありますので 紹介しておきます。