FTR250 オーバーホール
第2段になるかも知れませんがFTR250
G
のオーバーホールの紹介です、勿論ウチでやる限りはプラスα有りです。
このエンジンは2速に入らなかったり 入ったら抜けないと言う症状で入ってきました、そしてオーバーホールを
兼ねたある程度のチューニングも同時進行で行いました。オーナーの永く乗り続けたいと言う事を視野に置いた
ものです。このFTR250
G
はセル付きで今で言う「スカチューン」仕様 メーターも変わっており 走行距離不明。
まずヘッドカバーを外すのにお約束の5mmヘキサの6mmフランジボルトで案の定“カッチカチ”に絞まっていて
舐めると大変なので 腰下をバラす前提ですのでエンジンを下ろし作業スペースを確保、久しぶりにショックドラで外す。
思いの他 ロッカーアームは綺麗で荒れていなく カムはエキゾースト側に巣が出ていた、まだ年式ほど距離を
走っていないのか?(FTR250Gは86年製)
ヘッドを外す時にカムチェーンライン側の10mmスタッドボルトが固着して緩まない、無理に緩めるとスタッドボルトが
折れてしまう。ボルトは締める時に折れるものは比較的取れ易いが 緩める時に折れたボルトは取り難い。
スタッドボルトが折れるとこのボルトは焼きが入っているので逆タップもまず使えない。と なればシリンダー交換になる。
雌ネジがボケてもヘリサートがあるので何とか時間を掛けてもシリンダーを温存する方向で試みた。
タップを立てる要領で緩めては少し締めオイルをさしながら これを15分おきに行うと緩んでいった。
結局この作業で2日を要し半分ぐらい抜けたところで軽くなって外れた、そしてヘッドを外して驚いた。
シリンダーベースが割れているではないか!結局この2日は何だったのか!結局シリンダー交換だ。
元のシリンダーの内壁を見ると水が混入したらしく錆痕が有る、これが有るとオイル消耗が大きくなる。
この錆は意外と多く見られる。スリーブは鋳鉄製で錆びるとカビが根を張るように深く浸食するのでタチが悪い。
ピストンにも痕跡が・・・ ピストンヘッドのカーボンにオイルが染みている、ピストンサイドにもガスの吹き抜け痕。
ピストンとシリンダーのクリアランスが大きくなり圧縮抜け、オイル上がりを起こしている。
最初は爆発圧の通り道にカーボンが付着して茶色くなるが消耗が激しくなるとそのカーボンがこすれて落ちて
アルミ地が出る(ランド部)、O/Hにはちょっと遅いくらいです。
ピストンピンはスムーズに抜けた割にはピストン裏が焼けている、これは充分な暖機運転を怠ると焼けるのです。
ひどい場合はピストンピンに段付きが起こり 叩かないと抜けない。
そして腰下を全バラしミッションのチェック。
予測していたギアのドッグ部分には顕著な摩耗は見られない、綺麗なミッションだ。とするとこの症状は?
シフトシャフトに段付き摩耗が見られる、フォークをスライドさせると動きがぎこちない。おそらくメインは
この部分であろう、念のため2速を変えようとメーカー在庫を見るとすでに生廃だ。ミッションが原因の場合
ミッション自体を多機種のものとマルグチ変えるしか方法が無いようだ。
今回の場合はシフト駆動系であったのでその関連をすべて新品に交換する事にする。
シフターのスプリングは形状が変わっていた(左:新型 右:旧型)
シフトフォーク&シャフトを新品に交換
ME06系のエンジンはクランクケース分割時には必ずドライブシャフトシールを交換しておこう。
オイルが漏れた場合このオイルシールは内嵌めなので交換が厄介でシールは安いものの工賃は高くつく。
最悪の場合 外から嵌めるシールも有るが内圧で飛び出す可能性がある。
上映像↑のドライブシャフト側のベアリングが荒れ易いのでこれも交換しておこう。
今回クランクセンター出しも行うので新型の高速クランクベアリングを使い実施
このクランクは大端部に横ガタが多く出ていた為 修正しセンター出しを行った。
限度モノだが1度だけなら修正出来る場合が多い。
センター出しはクランクケースに入れるまでが勝負だ、少しでも衝撃を与えるとセンターがずれてしまう シビアで
デリケートな作業となる。たまにクランクのみ送ってきてセンター出しの依頼があるが輸送中に狂ってしまうので
パーツのみの通販は出来ない。また過去二十数年の経験上センターがノーマルで出ていたものは1つも無い。
そしてセンターが出なかったものは1件のみ有った。
また クランクケースのクランクベアリングが入る部分が甘くなり 手で簡単に取れるようなものは
クランクセンター出しを行っても意味が無い、これも限度モノだが1度だけなら修正出来る。
それ以外はケース交換になる。
上映像↑はバランサーとクランクを合わせる合いマークだが 大体このくらいのズレが有るのが通例だ。
今回依頼が無かったので修正しなかったが これをバッチリ合わせるとよりスムーズに回るようになる。
またクランクセンター出しの場合はME06以外のエンジンはバランサーのバックラッシュを出さないように
2枚合わせ構造になっているがこれが結構回転抵抗になるので外してやると クランクを回すだけで軽く
回るようになる。(外したからと言ってギア鳴りが大きくなるようなことは無い)
ホンダのクランクケースの精度はかなり高く センター出しを行ったものは必ずケースを合わせる時に
スルッと力を入れなくても底まで入るようになる。センター出しを行わない場合は手で押し入れてやら無いと
入らない。
強化カムチェーン、テンショナー、クラッチセンターブッシュは勿論新調し、ロングライフの要 強化オイルポンプを
設置。パルスローターとセンサーのギャップクリアランスを調整、クラッチにはFCC素材のディスクに
GHA加工アルミクラッチを投入 これでクラッチ側は万全の装備となる。
クラッチハウジングの段付き摩耗も必ずチェックし これも1度だけなら修正が可能。
上映像↑のディスクはこの頃の新車にのみ採用されているものでジャダーが出難いタイプだが
クラッチのミート感がグニャッとして気持ち悪い。
FTR250Gのセル仕様はMD30同様 フライホイルが異様に重いので超軽量加工を施した。
シリンダーは新型のレーサーのを流用し 270cc化でビルドアップ。
エンジンの最終の要はヘッドの仕上がりだ、バルブのガタは勿論 シートの当たりが命になる。
永く圧縮漏れを起こさず耐たせる独自のノウハウが有る。純正マニュアルの通りでは同じだけ耐たない。
カムはコンペカムシャフトに入替え 同時にロッカーアームも当たりが変わるので新調する。
カムベアリングも古いタイプが使われているので 新型のシールベアリングに変更。
タイミングギアにもME06系で使える軽量タイプが有るのでこれはお勧め。
スタッドボルトの締め付けトルクも独自の数値があり また組み方にもバランスを考慮したやり方が有る。
最終ヘッドカバーボルトを5mmヘキサフランジボルトから8mm六角フランジボルトに変更して出来上がり。
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この後 もう1台のFTR250Gの修理も紹介します。これは同じくセル仕様でモーター自体もΧ
セルのワンウェイもΧ この後の事も考えセルを廃しキック仕様に改造予定。プラス通勤特急も同時に施工。
ブレーキには軽量キャリパー バッテリーレス マフラー改造等など を紹介します。
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