後世に残すべきマシンがまた1台誕生した

ある日 通常の仕事のようにオーバーホールを兼ねたニイナナ”通勤快速”とリアショックO/Hの依頼が有った。

車両搬入時からいろんな話をしていると徐々に内容は膨らんでいった。

エキセルリムに強化スポーク、お任せトレールタイヤ 倒立フォーク。

その後 仕様変更でニイナナから300へ、そしてヘッドから上をME08化 NEW:HOTCAM

またME06に付けれると言った覚えはないのにCRMのスィングアームまで持ち込まれた。

これは1台パーツで組むような話だ、作業工程を追って紹介してみよう。


エンジンを下ろした後で気が付いて慌てて映像を撮った、搬入時の仕様。


=パワーユニット=

300はスリーブがクランクケースに入らないのでケースの座繰りが必須になるのでエンジン全バラになります。

ボーリングをすると切削粉が出るのでケース内のベアリングをすべて外し作業を行います。

300に欠かせないモノとして排気量拡大によるケース内の圧力が高くなるのでブリーザーの

排気口を見合った大きさに拡大しなくてはならない、またピストンの上下動にも抵抗になる。

注)ただ大きければ良いという訳ではない。大口径ブリーザーホースも設置。

このエンジンは稀に見る程度が良く クランクケースの開くも無く クランク自身もガタ無し。

300用のレーシングクランク(センター出しを含む)及び秘蔵のベアリングを圧入 ケースに

収める。(センター出しされたクランクは少しでも衝撃を与えると狂うので細心の注意が必要)

※レーシングクランク300のピストンに合わせ クランクの重心をノーマルと同じバランスに
なるよう軽量を兼ねて加工を行いセンター出しをする。コレをする事により振動脈動を消し
モーターのようなフィーリングが実現出来る。振動が出ないと言う事はクランク、ベアリングにも
負担は無く且つロングライフの要となる重要なポイントだ。

ME06の場合フロントスプロケ内側のオイルシールが内嵌めなのでケースを分割した際 必ず

新品に入替えておく。

※バランサー位置合わせXR系のエンジンでノーマルはクランクとバランサーに合いマークがある。
しかしピッタリ合っているものは無く コレを合わせる事で設計上の位置関係に戻せる。

クランクハウジングにガタが出ないようクリアランスを詰めておく事がミソ、FCCクラッチディスクに

GHA加工アルミクラッチは勿論組んでおく。強化オイルポンプも寿命の要 パルス進角加工も

同時に行うが ME06の場合パルサーのクリアランスが出来るのでキッチリ詰めておく。この作業で

適正なタイミングと火花を大きくも出来る。カムチェーンテンショナーと強化カムチェーンを投入するのは

言うまでも無い。またフライホイルは超軽量加工を施す。


ピストンは鍛造だが触れ取り加工でクリアランスを小さく取れるようになる、上下スリット加工は

ロングライフの必須、最近の加工でピストンピンも軽量加工が可能になり よりスムースな動き

レスポンスが可能になった。


上映像↑を見て鍛造ピストンらしからぬところに気が付く人は居るだろうか。

ヘッドはME08(MD30統合)に変更、ヘッドポーティングに耐久性機密性アップのシート加工。

チタンリテーナー&強化スプリングにNEW:HOTCAMを投入。(勿論バルタイ調整済み)

軽量カムスプロケットを組み合わせる。ヘッドカバーもME08を採用しHOTCAM ST-1を実施。

軽量ロッカーアームシャフトも投入。

シリンダーに6mmのヘリサート加工も施したが6mmロング強化スタッドも組み合わせる。

エンジンユニットはコレで完成。

通常300仕様に多少の味胡椒仕様で「お任せ田口仕様」には程遠いが充分なパフォーマンスは

発揮してくれる筈だ。

キャブはPJ36に整流板を組み込み、またME06よりMD30のインマニが5mm近く短いので

コレを採用 よりレスポンスが向上する。

次なる作業だが結局こんな状態だ。

次に着手したのがホイル回り、ブラックエキセルリムに強化スポークの組み合わせ。

タイヤには輸出用XR純正タイヤをチョイスした、個人的に林道などでグリップが良いトレールタイヤでお勧め。

ブレーキはフロントには“バキッ”と効くブレーキシステム リアにはビッグローターを配した。



事前に用意したパーツ群

フロントサスには倒立を選択 MD30の中古を持ち込んでもらった。

中身はステージTを組み込み(フリクションロス加工も実施)

ME06はMD30よりステムシャフトが短いので加工しボルトオン化 

極力車体には手を入れないようにするのがウチのやり方、元に戻せるようにしておく。


フロントホイル、ブレーキラインをレイアウト。

次が問題のリアサスだ。表向きME06に“スーパーデルタプロリンクシステム”を装着出来るとは

告示していない。が オーナーさんは付くと思い中古のスィングアームを持ってきた。

過去1台だけ付けた事があるので出来なくは無いがフレームに手を入れないといけない。

まずはノーマルリア周りを外す。

デルタプロリンクのサスユニットのピギーバッグがサブフレームに当たる為 迂回加工。




そしてMD30と違うところはスィングアームとエンジンが勘合式ではないのでソコの処理。

リアホイルにビッグローターを付け ホイルを装着。

リアスプロケットは48Tが付いていたので 慣らし用に43Tを付けておいた。


フロント回り完成


リア回り完成(チェーンはT-リングチェーン)


エンジン搭載


全景


排気系には当店オリジナルヘッダース + Powerd Muffler Mk.U

エアクリーナーBOX内にはインナーエアエレメント



点火にはダイレクトイグニッションシステム

キックは鍛造アルミ製

ヘッドから上はすべてME08化(圧抜きを潰す)
デコンプカムはオートデコンプワイヤーが付けれるようME06を入れておいた。



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そうして完成したのが



赤いシートからブルーに変更↓










かなりスパルタンな雰囲気に変貌を遂げた、かつて無いME06が完成した。


改造費総額\1.410.000-

丁度その時先輩格にあたる同仕様ME06ユーザーが来店 並べてみた。

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