クラス区分は3.000ccまでの特殊ツーリングカー(TS)と特殊グランドツーリングカー(GTS)、それに2.000ccまでの
レーシングカー(R)の3つ。ただしTSないしGTSに規定以上の改造を施してRクラスへ移行した車両については
3.000ccまでのエンジンを積む事が許されている。
招待選手のうち ベルコ72Dで出走予定だったbW津々見友彦は1週間前の富士500キロレースでマシンをクラッシュ
させたために参加できず、bX川口吉正(ポルシェ910)も都合で出場を取りやめ、F-Jに出る予定の木倉義文が
ハンドルを握る事になったが 木倉は21日の練習日にスピンしてポルシェのフレームを傷めた為予選に出られず
結局この2台はエントリーを取り消した。
<プラクティス>公式予選はレース当日の午前から午後にかけて行われた。予選方式はまず挑戦者グループが30分ほど
走り 次に招待者グループも混じって15分。そして最後に招待者だけが30分という変則的なシステムだ。
しかし 45分間が公平に与えられる事になる。
まず 注目の片山車は前日の練習日にどうしてもタイムが2分25秒以下に短縮できず 解決に頭を悩ましていた。だが
練習時間が終わる頃になって1.)キャブレターの直前にくるドライバーの頭が乱気流を作るので結果として高回転時の
吸入効率が阻害されている 2.)用意したホイルにはBS.RA2DX(RA200を改良したNEWタイヤ)よりもダンロップ
CR92の方がマッチしている 3.)フロントにスタビを装着する〜といった不具合と対策が分かり 当日はキャブに
インダクションポッドまがいのボックスを付けて現れた。しかし 予選で2分20秒05をマークした直後 ミッションのオイル
シールを止めるボルトが緩み オイルがクラッチに回ってしまう。この為パドックにマシンを引き上げると 大急ぎで
ミッションを外しクラッチをオーバーホールに掛かった。
また浅岡のbTいすずR6スパイダーは練習中にブロックを破損してスペアエンジンに載せ変えたがパワー不足の
ためギアを一段落としたにもかかわらず予選は2分27秒01で7位。
予選で関係者の度肝を抜いたのは7高原と6田中だった。高原は前日の練習最後になって2分13秒09という
タイムをたたき出し皆を唖然とさせた。翌日には2速ギアを交換し2分13秒04を樹立。対し田中はなかなかタイムを
出せず 公式練習最終周で2分12秒08という鈴鹿の公式タイムとしては前人未到の快記録を打ち立てた(‘69 トヨタ
−7;2分16秒07)。予選中19浅谷リバーサイドM10Aクラッシュ 21大村プレストR-7 22清水スズキバンキン
が未出走で 結局23台の出走となった。
<スタートまで> 出走予定は午後4時、30分前にスターティンググリッドに並んだ。
ことに2分27秒台にコンマ1秒ごとに8台のマシンがひしめき合い過去のレースにない緊張感を盛り上げている。
その頃からどんより曇っていた空が怪しくなってきた、15分前とうとう雨が降りコースを濡らしはじめた。
ファクトリー勢はオールウェザータイヤに交換する、田中と高原はドライコンパウンドでウェット路面ではまったく
走れないと言う。両者の胸には不安の輪が広がっていた。その時場内アナウンスで「タイヤ交換のため スタートを
15分遅らせます」と・・・ 「そんなバカな!」田中と高原は異口同音に叫ぶ。“主催者の措置は物量のファクトリーを
有利にさせるだけで時間ギリギリの雨をどう判断するかがレースの駆け引きじゃないか。4時にスタートさせてくれ”
二人は競技委員に抗議したが取り合ってもらえない。田中と高原は抗議の退場を考えたが スタート時点で雨が
やんでいたられをやろう との結論に達した。ところがスタンド前はパラツキ雨だったのにヘアピン、スプーンの
方はかなり激しい雨が降っていたのだ。この雨も4時過ぎには小止みになる。スタート地点では一度パラツイタ雨も
止んでしまった。交換したオールウェザーやレインタイヤを慌てて付け替えるファクトリー勢、中にはオールウェザーに
掛けたマシンもあった。
<決勝レース>
4時15分スタート、まず6田中シェブロンが飛び出し3片山ロータリー7R、7高原ローラが
これを追った。後続の各車はほとんど“異常接近”状態で第一コーナーに殺到する。1コーナーと2、3コーナーの
真ん中で1台アウトにはじき出された、10都平健二のスカイラインだ。
その頃スタートラインでは17高橋晴邦マークUがただ1台むなしくスターターを回している その後リタイア。
すでにトップはS字からダンロップブリッヂをくぐろうとしている、その間田中はどんどん先行する。
デグナーからヘアピンにかかるころ濡れた路面にトップ3台はかなり動揺をきたした。
片山が110Rで減速したところ高原がすり抜けて2位に浮上。スプーンに差し掛かった田中もよろめきながら
間一髪でマシンを立て直す、これで田中と高原の距離はぐっと縮まった。最終コーナー田中と高原はもつれるようにして
姿を現した、田中の方がやや先行。がこの時田中はコースの半分がウェットなのでレースを棄権するかどうか高原の
反応をうかがうべく一瞬アクセルを緩めたスキにスタンド前で高原にかわされる。少し間をおいて26鈴木240Z
1高橋国光240Z 31長谷見昌弘HT・GT-R 29黒沢元治HT・GT-R 2北野元240Zといったニッサン勢が
一団となって通過、
3片山が10番目に姿を見せたがピットへ。片山も雨が降ったら棄権する事を予定していた。
続いて片山の愛弟子18武智カペラもピットインしてきた。こちらはスプーンで15蟹江マークUと接触、蟹江を
ガードレールまで弾き飛ばしていた その衝撃でホイルを曲げてのピットインだ、フロント2本をレインに変えてピットアウト。
2周目:高原と田中は50mぐらいの差で走行、これに150mほど遅れて1高橋 31長谷見 29黒沢HT・GT-R。
26鈴木は6位に落ちた。
4周目に入った時10番手の15蟹江マークUが第一コーナーをノーブレーキのような
スピードで突っ込みスピン 2〜3回転したあとテールからガードレールにクラッシュ さらに宙を舞って都平スカイライン
とガードレールにぶつかって着地した。ドライバーは車外に出ようとするがドアが開かず窓から脱出。ボッと鈍い音がして
ターボチャージャーマークUが燃え出した。この後消化活動が手間取りマークUは全焼。
この火災シーンを背景に高原と田中のつばぜり合いは続くが周回が進むにつれその差は開いてゆく。
一方 8周目1高橋を追って4位につけていた2北野がスプーンの立ち上がりでスピン、アウトのグリーンを突っ切り
溝にタイヤを落として脱落する。
ピットインで遅れをとった片山は1周に2〜4秒づつ高橋との差をつめ 10周目には
射程圏内に捕らえ11周目には3位に浮上。16周目健闘していた片山がロータリーエンジンの発生する高周波ストレス
の為マフラーが破損 ペースを落とす。
以降順位変動は無くフィニッシュ。
マシン内容も多彩;
フェアレディ240Zはワークス2.400ccベース 市販車ベース最上位:総合4位1高橋Z 19周
プライベーター240Z 総合6位bQ6鈴木Z 19周
プライベーター改3.000cc 総合8位bP0西野Z 19周
コロナマークUXRは1.900ccにターボチャージャー付 係数換算:2.600cc 総合9位bP4久木留 19周
カペラ 係数換算:2.292cc 総合17位bP8武智 17周
必ずしも排気量が大きいものが速いというものでも無いのが面白い。
スカイラインHT・GT-R 1.989cc 総合7位bQ9黒沢 19周 の結果はマシンのポテンシャルの高さを示すには
充分なものだ。
ニッサンファクトリー:フェアレディ240Z(HS30) L24;2.394ccSOHCという紹介だが詳しい記述は残っていない。やはりファクトリーマシンだけに他の240Zと違い ただならぬ雰囲気をかもし出している。エンジンはクロスフロータイプを採用されているとは思うのだが・・・ ターンフロ−のL24なのか!?しかしカッコ良過ぎる。
1972 9.2 富士GC第3戦 富士インター200マイルレースで「富士のテストには2.4リッターのエンジンを積んだGT-Rと 軽量ボディGT-R+S20エンジンの2台を持ち込んで比較テストが行われたらしい」と言う記述があったが このL24エンジンが謎のベールに包まれている。