メインイベントのグランチャンピオンレース終盤から激しさを加えた雨は、瞬間最大風速18m/secの強風を伴い
まるで台風襲来のようだ。この最悪のコンディションで行われるスーパーツーリングチャンピオンレースが予定から
30分遅れの3時ジャストに変更された。
スターティンググリッドに着いたのは予選を通過した23台のうち19台。ポールポジションは前日のプラクティスで
驚異的な2分00秒41(平均約180km/h)をマークしたbP5スカイラインHT・GT-Rの高橋国光。ダンロップ試作の
スリックを履いて叩き出したもの。
これまでツーリングカーでは昨年10月10日富士マスターズ250で記録した2分01秒62がベストタイム。
ドライバー、マシン共に今回と同じ高橋国光とスカイラインHT・GT-Rのコンビ。
2番手は同じスカイラインHT・GT-R都平健二bP6(2分02秒46)。その横に2台のセリカ1600GTを駆るTMSC・Rの
bX久木留博之(2分03秒26)、bP0蟹江光正(2分03秒85)。
2列目にはプライベートスカイラインHT・GT-Rの
bQ1久保田洋史(2分03秒97)、bQ4寺田陽次郎カペラ(2分04秒26)、bQ0杉崎直司HT・GT-R・・・。
1.6リッターのセリカが鈴鹿同様またも2リッター勢に割り込んでいる訳だ。この他サバンナ ブルーバードU、
ベレットGTRなども出場している。
対するロータリー勢は精彩を欠き3列目に24寺田カペラがやっと。
レースは1.600ccを境にTb、Tcのふたつに区分されそれぞれシリーズチャンピオンが誕生する。
全車がスターティンググリッドにつき 所定のスタート時間3時になってもスタート出来ない。また一段と横殴りの
雨が容赦なく叩きつけるからだ。再びスタートが10分延長され しかもレースは15周に短縮された。
午後3時10分 ようやくスタートを迎えた。
ニッサンワークスHT・GT-Rの15高橋 16都平がうまいスタートを切る。
これに21久保田 9久木留が食い下がるが10蟹江は大きく出遅れた。
1周目から3位以下を大きく引き離しての展開となる、特にトップの16都平HT・GT-Rの速さは目を見張るものがあり
2番手15高橋HT・GT-Rに100m近く差を付けている。高橋と3位グループの間にも同じぐらいの差が出ている。
確か16都平HT・GT-Rはスリックを装着し 15高橋HT・GT-Rはオールウェザーでの走行、信じられん。
ヘアピン立ち上がりで10蟹江セリカがスピン 左フロントフェンダー周りを大きく破損しピットイン 戦線離脱。
2周目には16都平HT・GT-Rに差を少し縮めた15高橋HT・GT-R、ちょっと間を置いて21久保田HT・GT-Rが続く。
早くも水に足を取られてスピンするクルマが出た、ガードレール側を加速していった30赤池カペラだ。が 後続車は
あやうくこれをかわして通過。この直後バンク入り口で9久木留がスピン ガードレールにクラッシュ、右前フロント
フェンダーを損傷したが走行には支障は無い。ハイドロプレーニングによる事故はこのほかにも発生した。
S字入り口の12番ポスト付近でbQ0杉崎HT・GT-Rと25岡本サバンナが接触、岡本は立ち直るが 杉崎はリタイアの
運命をたどったのだ。
また 300R の川のように水がコースを横切っているところで10蟹江セリカと10藤田セリカ同士がスピンして
接触、蟹江セリカはテールの下半分を大きくつぶしただけでレースに復帰できたのだが 藤田はピットまでたどり着き
リタイア。
リードする16都平HT・GT-Rと15高橋HT・GT-Rのスピードは豪雨の中とは思えないほど速く 3位以下に
水をあけていく。ここからレースは2台のワークスHT・GT-Rのランデブー走行となる。
3番手の21久保田も速い、だがすでに2周で約2km近くも引き離された。この周のトップ16都平健二
HT・GT-Rのタイムは2分45秒、9久木留が3分21秒だからそのスピード差は歴然としている。それでも9久木留は
スピン後 6番手まで上がってきた。
7周目に15高橋HT・GT-Rは16都平HT・GT-Rをかわし トップに浮上。
(この周15高橋HT・GT-Rは右側面に大きなダメージを受けている、都平と絡んだのか 周回遅れと絡んだのかは定かでは無い)
トップを快走していた16都平HT・GT-Rに異変が起きたのは8周目 15周に短縮したレースを12周で打ち切るとの
公式アナウンスがあってすぐの事だ。ハイスピードから最も急減速を強いられる第3コーナー(S字の入り口)
オーバースピードで突っ込み過ぎたのかそのまま まっすぐ土手へ、都平は無事、しかしリタイアとなってしまった。
その後 15高橋HT・GT-Rは単独トップのまま安定したラップで周回を重ねていく。
自ら巻き上げる水幕の流れをストレートや30度バンクで見てみるとテールウィングが整流及びリアのトラクション効果を
発揮しているのがよく分かる。
当然 15高橋HT・GT-Rが首位に上がる。
そして10周目 2位の21久保田HT・GT-Rをスタンド前で周回遅れとしてしまう、これで全員周回遅れとしてしまった。
ハイドロプレーンで高橋にもふらつきは流石にあるものの そのスピード差は歴然で コース各場面でスピンが見られる中
ワークスGT-Rのトータルバランスの高さを大衆の面前でまざまざと見せつけた。
ややペースを落として12周を回りきり 雨と風に重くはためくチェッカードフラッグを掻い潜った。
ニッサンワークスチームとして待ちに待った通算50勝の偉業を達成した瞬間であった。
これまで接戦を強いられたライバル車:ロータリー勢の存在感は身を潜め 屈辱の“周回遅れ”、雨での弱点を
露見したレースでもあった。ワークスドライバーの技量による部分も有るがそれだけではレースでは勝てない、
どんな悪条件でもアクセルを踏んでいける安定した走行性能、スカイラインのトータルバランスの高さが証明された
象徴的なレースとなった。