先回ワークスとして取りに行った‘71 12月12日 第6回富士ツーリスト・トロフィー500マイル・レース
しかしワークスGT-R全滅と言う予想だにしない結果に終わり 臨んだ雪辱戦

通算50勝目になった節目のレース

しかし あいにくの天候、条件は最悪のコンディションになった。

‘72 3月20日 富士300キロ・スピードレース(グランチャンピオン第1戦)

スーパーツーリング・チャンピオン・レース

富士スピードウェイ 6km 右回り 通常20周を15周に 90km(12周打切り) 出走19台


メインイベントのグランチャンピオンレース終盤から激しさを加えた雨は、瞬間最大風速18m/secの強風を伴い 

まるで台風襲来のようだ。この最悪のコンディションで行われるスーパーツーリングチャンピオンレースが予定から

30分遅れの3時ジャストに変更された。

スターティンググリッドに着いたのは予選を通過した23台のうち19台。ポールポジションは前日のプラクティスで

驚異的な2分00秒41(平均約180km/h)をマークしたbP5スカイラインHT・GT-Rの高橋国光。ダンロップ試作の

スリックを履いて叩き出したもの。

これまでツーリングカーでは昨年10月10日富士マスターズ250で記録した2分01秒62がベストタイム。

ドライバー、マシン共に今回と同じ高橋国光とスカイラインHT・GT-Rのコンビ。

2番手は同じスカイラインHT・GT-R都平健二bP6(2分02秒46)。その横に2台のセリカ1600GTを駆るTMSC・Rの

bX久木留博之(2分03秒26)、bP0蟹江光正(2分03秒85)。

2列目にはプライベートスカイラインHT・GT-Rの

bQ1久保田洋史(2分03秒97)、bQ4寺田陽次郎カペラ(2分04秒26)、bQ0杉崎直司HT・GT-R・・・。

1.6リッターのセリカが鈴鹿同様またも2リッター勢に割り込んでいる訳だ。この他サバンナ ブルーバードU、

ベレットGTRなども出場している。

対するロータリー勢は精彩を欠き3列目に24寺田カペラがやっと。

レースは1.600ccを境にTb、Tcのふたつに区分されそれぞれシリーズチャンピオンが誕生する。

全車がスターティンググリッドにつき 所定のスタート時間3時になってもスタート出来ない。また一段と横殴りの

雨が容赦なく叩きつけるからだ。再びスタートが10分延長され しかもレースは15周に短縮された。

午後3時10分 ようやくスタートを迎えた。

ニッサンワークスHT・GT-Rの15高橋 16都平がうまいスタートを切る。

これに21久保田 9久木留が食い下がるが10蟹江は大きく出遅れた。

1周目から3位以下を大きく引き離しての展開となる、特にトップの16都平HT・GT-Rの速さは目を見張るものがあり

2番手15高橋HT・GT-Rに100m近く差を付けている。高橋と3位グループの間にも同じぐらいの差が出ている。

確か16都平HT・GT-Rはスリックを装着し 15高橋HT・GT-Rはオールウェザーでの走行、信じられん。

ヘアピン立ち上がりで10蟹江セリカがスピン 左フロントフェンダー周りを大きく破損しピットイン 戦線離脱。

2周目には16都平HT・GT-Rに差を少し縮めた15高橋HT・GT-R、ちょっと間を置いて21久保田HT・GT-Rが続く。

早くも水に足を取られてスピンするクルマが出た、ガードレール側を加速していった30赤池カペラだ。が 後続車は

あやうくこれをかわして通過。この直後バンク入り口で9久木留がスピン ガードレールにクラッシュ、右前フロント

フェンダーを損傷したが走行には支障は無い。ハイドロプレーニングによる事故はこのほかにも発生した。

S字入り口の12番ポスト付近でbQ0杉崎HT・GT-Rと25岡本サバンナが接触、岡本は立ち直るが 杉崎はリタイアの

運命をたどったのだ。

また 300R の川のように水がコースを横切っているところで10蟹江セリカと10藤田セリカ同士がスピンして

接触、蟹江セリカはテールの下半分を大きくつぶしただけでレースに復帰できたのだが 藤田はピットまでたどり着き

リタイア。

リードする16都平HT・GT-Rと15高橋HT・GT-Rのスピードは豪雨の中とは思えないほど速く 3位以下に

水をあけていく。ここからレースは2台のワークスHT・GT-Rのランデブー走行となる。

3番手の21久保田も速い、だがすでに2周で約2km近くも引き離された。この周のトップ16都平健二

HT・GT-Rのタイムは2分45秒、9久木留が3分21秒だからそのスピード差は歴然としている。それでも9久木留は

スピン後 6番手まで上がってきた。

7周目に15高橋HT・GT-Rは16都平HT・GT-Rをかわし トップに浮上。

(この周15高橋HT・GT-Rは右側面に大きなダメージを受けている、都平と絡んだのか 周回遅れと絡んだのかは定かでは無い)

トップを快走していた16都平HT・GT-Rに異変が起きたのは8周目 15周に短縮したレースを12周で打ち切るとの

公式アナウンスがあってすぐの事だ。ハイスピードから最も急減速を強いられる第3コーナー(S字の入り口) 

オーバースピードで突っ込み過ぎたのかそのまま まっすぐ土手へ、都平は無事、しかしリタイアとなってしまった。

その後 15高橋HT・GT-Rは単独トップのまま安定したラップで周回を重ねていく。

自ら巻き上げる水幕の流れをストレートや30度バンクで見てみるとテールウィングが整流及びリアのトラクション効果を

発揮しているのがよく分かる。

当然 15高橋HT・GT-Rが首位に上がる。

そして10周目 2位の21久保田HT・GT-Rをスタンド前で周回遅れとしてしまう、これで全員周回遅れとしてしまった。

ハイドロプレーンで高橋にもふらつきは流石にあるものの そのスピード差は歴然で コース各場面でスピンが見られる中

ワークスGT-Rのトータルバランスの高さを大衆の面前でまざまざと見せつけた。

ややペースを落として12周を回りきり 雨と風に重くはためくチェッカードフラッグを掻い潜った。

ニッサンワークスチームとして待ちに待った通算50勝の偉業を達成した瞬間であった。

これまで接戦を強いられたライバル車:ロータリー勢の存在感は身を潜め 屈辱の“周回遅れ”、雨での弱点を

露見したレースでもあった。ワークスドライバーの技量による部分も有るがそれだけではレースでは勝てない、

どんな悪条件でもアクセルを踏んでいける安定した走行性能、スカイラインのトータルバランスの高さが証明された

象徴的なレースとなった。

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近年You Tubeにてこのレースを都平健二選手が振り返るものがある。

前日の予選(晴れ)で高橋国光選手がポールの2分00秒41

次いで都平健二選手の2分02秒46


ダンロップ試作のスリックを履いて

スタートから都平選手がぶっちぎりに速かった訳が明かされた。

言われなければ分からなかったが都平健二選手はスタート直前まで高橋国光選手と

同じ神戸製鋼マグホイルを履いていた。


パドックにて


スタート前 グリッドにて

ホイルを入れ替える為に□にホイルが置いてあるのが見える。

が 急遽フロントレース用オプション鉄っチンTOPYホイルに変えた、(おそらく6J)

リアにはレース用マグ8J 

高橋国光選手は前後同サイズのレース用マグ8J




このような悪条件では細いタイヤの方が速い それも一人だけラヂアルを選んだ。

メーカーが作成したこのレース映像の解説では都平選手がレインの浅溝、

高橋選手がレインの深溝を履いていると言っている。

都平選手の選択が的中し序盤高橋選手をも引き離すほどのスピード差があった。

セミワークスの久保田選手とは一周50秒ほどの差があり僅か3周でラップした。

その後久保田選手のGT-Rがミラーに写ったのを見て高橋選手だと勘違いし

焦り 後ろを気にし過ぎて注意散漫になりコースアウト(S字の入り口) リタイアしたと述べている。

青地康雄監督にひどく怒られ拳骨を喰らったとも述べている。

タラレバは無いがこのレースで都平健二選手が勝っていれば

もっとメジャーになっていたかも知れない。


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