日本は自動車大国 なのになぜ旧車を 大事にしないのか?
2015.08.28 / ニュース
ベストカーWeb編集部 ベストカーWeb編集部

日本は自動車大国 なのになぜ旧車を 大事にしないのか?

日本人は昔から歴史のあるもの、古いものを大事にしてきた。
しかし、今のクルマ界はまったくその逆で、自動車税をはじめ古いクルマいじめが横行している。
クルマ界から排除しようとしているとしか思えない動きが顕著だ。
なぜ自動車大国日本は旧車を大事にしないのか? その不思議を徹底調査する。
平成27年度の税制改正に伴い、今年4月1日から自動車取得税、5月1日から自動車重量税が変わり、新エコカー減税制度がスタート。それに加え、軽自動車税もアップしたのはみなさんもご存じのとおり。そんななか、あまりクローズアップされていないのが旧いクルマへの増税だ。

スクリーンショット(2015-08-28 10.27.24)まず、自動車税。平成26年度の地方税改正により、平成27年度から、ディーゼル車がこれまでの10年超から11年超に変更になり、13年超のガソリン車、LPG車と合わせて、平成26年度までの10%重課から、15%の重課に引き上げられている。
例えば新規登録から13年超の1?超?1・5?以下のガソリン車の場合、標準税率は年3万4500円、平成26年度までは年3万7900円だったが、今年4月1日以降からは3万9600円に引き上げられた。
軽自動車税も新規登録から13年を経過した軽自動車は’16年度ぶんから、20%重課という厳しいもの。今年3月31日までは7200円だが来年4月1日からの’16年度ぶんは1万2900円と、増税前の1・8倍に跳ね上がった。
自動車重量税については、平成25年度税制改正において18年超、平成26年度改正では13年超の税額が軽も含め、大幅に引き上げられている。
そこで、なぜここまで旧車の税金を高くしたのかに迫ってみたい。


何を基準に13年超は 増税となるのか?

そもそも、なぜ13年を超えたクルマが重い課税をされなければいけないのか? 国交省自動車局や財務省主税局に聞いてみたが、なしのつぶて。ようやく辿り着いたのが総務省都道府県県税課の篠崎さん。
「平成13年度に始まったグリーン化税制は、環境配慮型税制で自動車の環境負荷に応じて自動車税の軽課または重課が始まりました。環境に優しいクルマを増やし、環境負荷が大きいクルマへの重課が主な目的ですが、13年超となっているのは自動車の平均使用年数から決めています」
たしかに自動車検査登録情報協会が発表した、新車登録後から抹消されるまでの期間を示した乗用車の平均使用年数を見ると重課される13年に近い12・64年。スクラップにして新車買い替えを促進させたエコカー補助金制度でも13年超のクルマが対象だった。
スクリーンショット(2015-08-28 10.08.42)ただ、篠崎さんによれば、2年ごとに見直しされていて、現在、いろんな議論が交わされているそうだ。例えば13年超のクルマを所有しても走行距離が少なければCO2排出量が少ない。日本はこれだけの自動車大国なのに、後世に日本の自動車文化を残すという観点からも反する。13年超の自動車税、自動車重量税を安くしてもお金持ちだけが得をして、あまり影響はないんじゃないか。欧州諸国のようなヒストリックカーへの優遇措置(後述)を見習うべき、などなど。
ドイツには30年以上前の 旧車対象の優遇措置がある。
日本の自動車関連の税金の高さには怒りを通り越して諦めムードを感じているが、欧州諸国のヒストリックカーへの優遇措置があると聞いた時には、日本はなんてひどい国なんだと溜息が出た。
スイスにはコレクターズナンバーというものがあり、クラシックカーの保護にあたっている。クラシックカーの定義としては、30年以上前のコンディションのいいクルマであること。また年間2000マイル以内、一般車両の車検は2年だが6年ごとの車検となっている。1枚のコレクターズナンバーに対して最低3台保有することが条件で最大20台のクルマが登録できるという。さらにおもしろいのは税金や保険は排気量の一番大きいクルマに課せられることだ。
イギリスでは以前は25年以上前のクルマが対象だったが、現在では1973年以前のクルマに税金が免除される優遇制度がある。毎年車検は必要だが、乗る期間と乗らない期間、置き場所を申請するSCRNというシステムで、乗る期間だけ税金を支払うというもの。
ドイツでも隣国スイスに習って、ヒストリックカーの優遇税制を実施している。どういう制度なのか、ドイツ在住のコラムニスト、シュペネマン和人氏に聞いた。
「ドイツの自動車税に関してですが、自動車の古さとは一切関係ありません。基本、エンジンの形態、ガソリンエンジンかディーゼルエンジン、そして排気量、CO2放出量、キャタライザーの装備等(どのユーロ規制をクリアしているか)が左右します。
例えば、3?のガソリンエンジンでユーロ4をクリアしていれば、’01年式であっても’09年式であっても同じ税率で約200ユーロ(約2万7200円。※1ユーロ=136円)、ディーゼルエンジンだと約450ユーロ(約6万円)


ナンバーの末尾にHナンバーのついた、ドイツのヒストリックナンバー。ドイツの大都市では、触媒を装備した自動車しか入れないクリーンゾーン(グリーンゾーン)に、Hナンバー車はどこにでも入ることができるという

続いて、’97年に始まったヒストリックナンバーという制度です。自動車はドイツの主幹産業であり、自動車は建物やその他の芸術品と同じく、文化遺産として保護すべきという考えから誕生した制度です。30年以上古いクルマで、オリジナルの状態でレストアされている車両は、自動車のナンバープレートの数字表記の右端にH(ヒストリックのH)を申請することができます。TUV(技術検査協会)で認定が取れると、一律に排気量に関係なく自動車税が191・71ユーロ(約2万6000円)と一定額になり、強制保険を含む自動車保険も減額されます。
こうした優遇を受け、’97年には約1万3500台だったHナンバー車は’13年には約20倍の28万5000台に増えて、ヒストリックカーブームを巻き起こし、各自動車メーカーもクラシックカーのレストアから旧いパーツの供給など、立派にビジネスとして成功しています」
実は東京都にも1945年以前のクルマを優遇するヴィンテージカー減免制度がある。新規登録は取得税と自動車税、すでに所有している場合は自動車税が減免される。
東京都だけでなく、やはり日本の自動車文化を守るために、政府が主導してヒストリックカーの優遇制度を行うべきだ。そうしないと、日本の名車は、故郷・日本からなくなってしまうかもしれない。


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