ネットの動画などで旧車のレストアを見る。

多くは下回りの腐った部分を切り取り 作ったパーツをパズルのように嵌め込み溶接。

多くのクルマはモノコックと呼ばれる構造のフレームが主流。

ココではもう言わなくても皆さんはご存知でしょうが

モノコックとは金属板を強度が出る立体のカタチで張り合わせる構造体の事で

軽量化を兼ねてトータル的に剛性を持たせる構造のものを示す。

旧車はこのフレームが命となるわけだが 程度も様々、

多くは下回りが腐って穴が開き ひどいものは無くなっているかメッシュ状態

当時のワークスドライバーたちが現在のイベントなどでそれぞれのインプレを行う中

ほとんどが無難な回答で 決してくさしたりはしない。

そんな中 長谷見昌弘選手の貴重な証言があった。

KPGC10をインプレの最中 長谷見選手のおもわず毀れた言葉

「昔はコレでも速かったんだよねぇ 今となってはとんでもなく遅いから・・・」

「スカイラインのフレーム剛性は昔のグリップ力の低いバイアスタイヤに合わせて設計、

当時はクルマが滑ってもコントロールしやすかった。

ハードトップは一番フレーム剛性が良くて私は大好きです。

フレーム剛性が良いと言うことはドライバーとしてコントロールしやすく恐怖感が無い。

いかに滑ろうが 雨の日も怖くなかった。」


また 別のイベントで

「僕もインベントなんかでお客さんのクルマを結構乗ったりすることがあるんですけど 

まず昔のスカイラインの当時レースやってたクルマとは 掛け離れた操縦性の悪さですね、

フレームそのものがもう大分痛んでますからね それと当時の溝切りタイヤみたいなのが無いんですよね。

今スリックタイヤでしょう ものすごくグリップするんですよ。しかも当時はバイアスコードのタイヤで

今ラジアルタイヤでしょ もうこの差だけでもすごいグリップするんですよ、信じられない差がありますからね。

こんないいタイヤを履いてサーキット走ったらもうフレームがもたないんですよね フニャフニャなフィーリングなんですよ。

これでも大体オーナーの人は当時のフィーリングを知らない人がほとんどなんです。だから当時はこいうタイヤで

こいういうフィーリングだったんだよって ソレにあわせたサスペンションだったものがものすごく乗りやすかった と。

だから富士のコースで真横になってもアクセルを踏み続けられた。」


当時のレギュレーションはフレームに強度を上げるものなどのパーツや加工は 一切禁止だった。(ロールバー含む)

それを踏まえた上で 4ドアからハードトップに移行する時 より剛性が上がるよう設計された。

当時エンジンルームなどの画像を見ても タワーバーなどの装備は無い。

ワークスドライバーたちは巣のフレーム剛性を コースを攻め込む事で身を持って体験し

当時を振り返って印象を述べているのだ。

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スカイラインオーナーで たまの天気が良い日に乗る程度のものなら

コレ以降書く事例には当たらないので 機嫌良くそのまま乗っていてください。

見るには及びません。


それでは今のフレームを当時に近いコンセプトに近づける手法としてはどうすれば良いのだろうか。

もう五十年以上経つスカイラインのフレームをどのように再生すれば良いかが課題になる。

一般的にはショップに相談してもおそらくガッチガチに固める事を勧めてくるだろうが

レース専用ならともかく ナンバーを受け一般公道を使う目的であれば

私はそうは思わない。

従来の腐った部分を切り取り 新しいパーツを溶接するような手法は良く見るが

強度に関係無い部分であればそれで良いだろう。

前から後ろまで平行に渡っているフレーム裏のメンバーやバルクヘッド回りは 

部分的な切り取りは考えなけれなら無い。

原型は維持出来るが剛性なんて望める訳が無い。

どうせやるならスカイラインの本来の素性を活かす 意味のある再生を目指したい。

新車と同様に戻す事は金属の経年変化やスポットの緩みなどを考えると不可能に近い。

注意しなければならないのが 固めれば良い というやり方、

当時のワークスドライバーが言っていた「ハードトップはフレームの剛性が良かった」と言う意味、

3点式のロールバーが付いていたが 当時はフレームの剛性を上げるものであってはならない と言うレギュレーション。

当時のレースシーンを見れば一目瞭然

強いながらも適度に逃がす“しなり”があってのトータル的な事を言っている。

“しなり”を含んだトータル剛性を考えなければならない。

8点式以上のロールゲージなどでガッチガチに固めるのは得策では無いだろう。

最近のクルマは比較にならないほど高剛性なのは言うまでも無い、

そのフレームに見合った足回りが装備されているのでトータル性能が保たれている。

だから新しい(高年式)サスを入れれば良いわけでは無い。

サス型式やレイアウトが違うのだ。

------------ Take a step further -----------

メーカー側の解説

フロントサスペンション

=ストラット式独立懸架=

ストラット式独立懸架はロール角が少なく接地性に優れコーナーの安定性が抜群です。


フロントサスペンションはショックアブソーバーを内蔵したマクファーリン・ストラットタイプで

上部はコイルスプリングを介してボディ側に 下側はトランスバースリンクとテンションロッドで

支持されている。ショックアブソーバーの外筒下端はナックルスピンドルを溶接し このスピンドル下側には

ボールジョイントを取り付けて これにトランスバースリンクを接続し ラバーブッシュを介して

サスペンションメンバに結合されている。またショックアブソバーのピストンロッド上端と外筒に

溶接したスプリングシートの間にコイルスプリングを収め これ等をスラストベアリング介して

ボディに結合されている。更にロアボールジョイントとボディ前部に設けられたテンションロッドで

サスペンション全体の前後動を支持しトーションバー式スタビライザーで左右を連携させている。

このように前後方向をテンションロッドで上下方向の力をサスペンションストラッドで

また横方向の力をトランスバースリンクで支持し 3方向の力を分散して車体に吸収させる

合理的なサスペンションである。


リアサスペンション

=セミトレーリング式独立懸架=

高速走行でも未整地でも独特の安定性を発揮するリアサスペンション

コシが強くしかもソフトな乗り心地を与えます。(GT・GTX・GTR)


スカイラインのリアサスペンションはセミトレーリングアーム式で その構成はサスペンションアーム、

ドライブシャフト等からなり ギアキャリアもメンバに固定されて サスペンション構成の

一部を形成している。サスペンション全体は4箇所のインシュレーターを介してボディに取り付けられ

各部には多量のゴムを使って振動を吸収すると共にスプリング、ショックアブソーバー、バンパ、ラバー等で

ショックを和らげている。


=モノコックボディ=

通常セダンタイプをハードトップに設計し直す場合 ボディ強度が不足する為 補強をせざるを得なく重量は増すのが

自動車設計界の常識であった。日産設計首脳陣の技術の粋を結集して強度を上げつつ20kgの軽量化に成功した。


過去の自動車のボディは 衝突においても破損の少ない頑丈なボディを“是”としてきたが

乗員保護思想を優先すると まったく逆に衝突時の衝突エネルギーはボディの変形によって

緩和される必要があり その為に乗員の客室はより頑丈に そして前部エンジンルーム、

後部トランクルーム部を柔らかに設計した。“エネルギー吸収ボディ”がクラッシャブルボディである。

万が一の事故において 一見ボディの変形が大げさに見えるが 実はこうなる事が望ましく

コレによってドライバー等への衝撃が大幅に軽減するのである。また事故による保護という面では

ドアが閉じたままである事が望ましく 車外に人が放り出されないように つまりドアのロック装置が

外れ難く破損し難いアンチバースト式ストライカーが装備されている。

GTとGTRは同一のボディシェル/モノコック構造を用いる。

ただしホイルのオフセット量増大、レーシングタイヤ装着の考慮から ホイルオープニング上に

オーバーフェンダー風のリムを張り出した。その為全幅はGTの1595mmより15mm増の1610mmとなった。

全長はバンパーオーバーライダーの廃止で35mm減の4395mm、全高は5mm減の1385mm。

PGC10のホイルベースはGC10・GTと同一の2640mmであるが 1971年式から4ドアセダンに代わって

GTRの役割を引き継いだハードトップでは70mm減の2570mmに短縮された。

コレに伴って全長4330mm 65mm減、全高1370mm 15mm減、いずれもPGCと対比と変化した。



ボディモノコック構成パーツ



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=教訓=

私が始めに手に入れたスカGは

この画像では分からないと思うが




の部分が腐っていた。

定番で腐りやすいところと室内のフロアはバレーボール大の穴が2箇所

どの固体を取ってみても 多かれ少なかれ治さなければならないのは変わらないので

この赤いスカイラインにしたのだがレストアを諦めた。

あまりにフレームが全般的に腐っていた。

コレを教訓にまずはフレームがしっかりしている固体を探した。

外観は勿論 下回り ホイルアーチ内 トランクルームは特に入念に見させてもらった。

最後にフロア

カーペットをめくって隅々まで 見難いがバルクヘッド そしてエンジンルーム

目だった腐りが見当たらなかったのでこのスカGに決めた。

持ち帰ってすぐに防錆処理のため 裸にして施術を行ったが非常によい固体に当たった事に感謝した。





上映像↑のような部分が腐ったモノは切り取って治すのが通例だが

申し訳ないがこんな切り継ぎのフレームは治してもダメだ。

本来のモノコックの強度が無いからだ。

ただ五十年以上経っているので 良い固体を探すのは至難の業ではないのは分かっている。

また補修済みで塗り込まれていてはもっと見極めずらい。


大事なのはこの部分が“命”と言う事(ドアも構成に含まれる)


結局 上の赤いスカイラインは書類付きのフレームとして売ることになった。

オークションなどで売ろうとは思ったが 最後の砦として専門店に買取をしてくれるか聞いてみた。

するとそこの大将は「是非売って欲しい “草むらのヒーロー”のようなものでも買うよ、

どんなものでも起こせるからね。旧車は儲かるからね」 と。

極端な話 コレ↓が



こうなったら分からないからね
(イメージ)


腐った部分を切り取り 継ぎ接ぎのこんな状態で強度が保てると思いますか?

ただ一般ユーザーにこんな事を言っても選びようが無いのも充分分かっています。

まさにCHINA製の空母のようなモノ

見た目が綺麗だからと飛びついてはいけない じっくり見るところをチェックして欲しい。


またスカイラインを探していた頃 有名なショップに声を掛けていた。

すぐに良い物があると連絡が入って見に行った。(前述済)

見た目はブッカケ塗装で綺麗に見えたがフロアにバレーボール大の穴か開いていて

カーペットで隠してあった。(左右共)「コレも治してくれるんですよね」と聞くと

そのショップのメカ長が「いやいや そんなモンだよ」と即答。

スカGも数多く手掛けていて実績もあるように見えたが

と そそくさと切り上げて帰った。

商売とはいえ コレはないわぁ〜

私の大好きなスカGで こんないいかげんな商売をして暴利を貪っている事に非常に腹が立った。

勿論 それから距離をとっている。


そんな経緯があり 出来る事は自分でやらないと「ここまでやった」と納得がいかない。

多くは「自分のクルマ」のようには手を入れてくる業者はそうあるものではない。

当時のスカイラインを追い求めると様々な部分に想いが入ってくる。

特に今回のフレームの件は長谷見選手の一言が気になって

メーカーの開発コンセプトに立ち戻り どのようなやり方で当時に近づける事が出来るか

考えに至ったわけです。

高橋国光選手 黒澤元治選手 砂子義一選手 北野元選手 都平健二選手など

「ハードトップGTRはフレーム剛性が強く良かった」と それぞれ共通の見解は述べられている。

長谷見選手だけが今のスカイラインユーザーに向けて“本音”を語っていたのです。

プロの目から見て 皆さん自慢のスカイラインに往年のドライバーに乗ってもらって

忖度なしの素直な意見はかなり貴重だし 今後のマシン造りのヒントとなるだろう。

自分のスカGの方向性を使っているうちに固まってくるようになって

それが当時のレース用と被ってきている事に そのやり方に“確信”のようなものを感じている。

ハコスカに乗りたいといって普通に所有するユーザーは既存の売り物で良いと思う。

私のようなモノは珍しいと思いますが 出来る事であれば当時躍動していたあのスカイラインを

日常の生活の中で体感してみたいというのが希望なのです。

ボディ再生


=END=