最後まで公認軽量10%が達成出来なかった難しさ

最終型ワークスHT GT-R仕様

スカイラインHT GTRは公認重量が1.020kg、

TS改造で10%の軽減が許されているリミット918kg;実質重量935kg前後

あと 17kgが軽量出来なかった。

最終ワークスHT・GT-R S20エンジン改;264PS/8.400rpm


GT‐R用軽量化部品リスト
   部品または部位 → 主要対策
 エンジン関係  クーリングファン → 径の短縮
 フライホイル&プーリー → 軽量品
 コンロッド&バルブ → チタン合金製
 エアファンネル → チタン合金
 ラヂエター → アルミ製3層
 エキゾーストマニホールド→軽量品ショートタイプ
 SPL;ヘッド シリンダー&スリーブ クランク
 エンジンルーム  バッテリーケーブル → アルミ製特注品
 バッテリーアースケーブル → アルミ製特注品
 マスターバッグ→取り外しダイレクト
 ボディ関係  ボンネット → FRP
 ボンネット変更に伴いヒンジ→取り外しボンピン
 リヤトランクリッド → FRP
 ドア関係&フロントフェンダー → FRP
 ドアヒンジ → アルミ鋳物 
 リヤウィンド → アクリル製
 ドアガラス → アクリル製
 フロント リヤバンパー → 取り外し
 フェンダーミラー → 取り外し
 ドライバーズシート → 軽量品
 パッセンジャーズシート → 軽量品
 リヤシート → 取り外し
 フロアマット → 取り外し
 グローブボックス&カバー → 取り外し
 ルームランプ&サンバイザー → 取り外し
 ヘッドランプ → FRPカバー
 フロントグリル → 取り外し
 ドアモール&ウィンドモール類 → 取り外し
 足回り関係  ホイル → マグネシウム
 サスペンションブッシュ → ナイロンブッシュ
 リアドラム → アルミ製(最終ディスク化で重量増)
・ドア内張り及び防震防音材除去 ・計器盤内不要なもの ラジオ ヒーター除去
 ・車体で強度に関係ない部分に穴開け軽量加工(かなり細かい部分にまで手が入っていた) アルミ製安全タンクなど
 備品:checkmanを流用

またワークスは室内などの強度に影響ないボディを切り抜いたり穴を開けてまで軽量化を進めていた。




最終型                           HT・GT-R中期


ワークスHT・GT-Rの室内の様子が見て取れる


反し 追加装備

ヒューエルインジェクションユニット
ドライサンプシステムユニット
フロントオイルクーラーユニット
大型バッテリー
オイルキャッチタンク
デフオイルクーラー及び潤滑ユニット
リアスタビライザーの装備及びフロントスタビのФアップ
3点式ロールバー

結局 S20型ならではの直列6気筒DOHCと言う複雑でヘッドが大きく、
多くのパーツ構成で成り立っているエンジンユニットが重量の幅を占めていた、
またミッションはそれほどでもないにしても ドライブシャフト デフの重量はなかなかのものだ。



4ドア開発時点でボンネット ドア リアトランクなどFRP製に変更されているのが良く分かる


フロントフェンダーもFRP製に変更されている  ヒューエルタンク:アルミ製安全タンクに変更
                             100L住友電気工業製


また リアトランクステーを見て欲しい、こんな小さなパーツにまで軽量化の為に穴が開けられている。
フレームボディ自体にもこうした軽量加工が随所に見られ 可能な限りの軽量化を行ったが規定の10%の軽量までには至らなかった。


のちに都平健二選手の証言に「ドアを開けた時にドアヒンジがアルミに変えてあった事に気付いた、流石ワークスだなと思った」と。

ニッサン特殊車両部第2特殊車両課(ニッサンワークス)の軽量化を見てみるとFRP製のフロントボンネット、フェンダー、トランク、

ドア、及びアクリルウィンドウ 車体内側に穴あけ加工など 勿論当時のロールバーはフレームに溶接は不可で有る事を見ると

素のノーマルフレームがいかに剛性が強かったかが良く分かる。勿論フレーム系にはタワーバーなどの補強具装備も

一切されていない。特にドアやウィンドウなどははまっていてトータル剛性を出す相互効果も有る部分だ、

ファイバーやアクリルではその剛性を期待出来る事も出来ない。フレームはガッチリ固めるだけでは必要以上に重くなるか

応力が集中する部分に金属疲労が溜まり いずれクラックが入る、適度な“しなり”が応力の分散効果や“収まり”の良さを出す。

当時の通例設計であれば4ドアフレームから2ドアのフレームに設計変更する場合 フロントドアとリアドア間のピラーが無くなる分 

フレーム剛性を上げる為補強を増す その補強により4ドアより重くなるのが常識で有ったが HT・GT-Rはそれを覆し 

更に軽量化されて出てきた。これぞ飛行機屋魂「プリンス」のノウハウが息づいている証であろう。

ちまたに(雑誌も含め)“ハコスカはフレーム剛性が弱かった”などと言う記述を見うけるが 

まったくハコスカを理解していないと言えるであろう(勿論今のクルマと比較すべきでない)。

また 一つのメーカーの中でスカイラインが継承されて出ている訳だが4ドアタイプから2ドアにモデルチェンジされた時は 4ドアでの

ウィークポイントを修正し進化型として2ドアハードトップ出てきた、当たり前の事だと思う。しかしその2ドアから何故ケンメリのようなまったく

コンセプトの異なるモデルに変わってしまったのだろうか?時代としては好評であったが それも世間では継承されるスカイライン人気に

よるもので 実質受け継がれたものは“サーフィンライン”のみ。

勿論 更なる進化型が出てくると思った、しかし 到底レースで使えるようなものでは 何故なくなってしまったのか。

現実問題 目前には来るべき排気ガス規制対応車両で“レース”という場に投入する事をケンメリには 初めから視野に無かったのだろう。

社内では従来のハコスカ開発陣ともリンクしていなかったようだ。今 桜井の回顧録を見てみても スカイラインは基もとのコンセプトから離れ

迷走するスカイラインを嘆いているのも私には良く分かる。


PS.メーカー設計陣の記述に ハコスカはもともと“100マイルカー”として製作された とある。この「100マイルカー」とは

160km/hで巡航出来るクルマとして設計されている と言う事である、道理でフレーム剛性が強い訳だ。


一般ユーザーに向けての日産スポーツコーナー推奨パーツはスクデリアニッサンで販売されていた



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