=XR400Rの優秀性=


XR350Rの後継モデル

=メーカー発表概要=

本田技研工業(株)は、粘り強く扱いやすい出力特性の空冷・4サイクル・単気筒エンジンを軽量 ・コンパクトな車体に

搭載し、不整地で優れた走破性を発揮するオフロード走行専用車「ホンダ XR400R 」を発表した。

このXR400Rは、輸出モデルとして'95年8月より北米や欧州などの世界各国で発売以来、高性能なエンデューロ

マシンとして好評を得ているモデルである。

=ホンダ XR400Rの主な特徴=

<エンジン>
●低・中回転域での力強いトルク特性や高いトラクション性能はもとより、ライダーの意思に忠実に反応する

優れたレスポンス性を合せもった空冷・4サイクル・単気筒エンジン。

燃焼効率に優れたRFVC(放射状4バルブ半球形燃焼室)機構の採用。

軽量・コンパクトでオイルの冷却性能の向上に寄与するドライサンプ潤滑システム。

過酷な条件でオイルの油温の上昇を抑え、耐久性と信頼性の向上に効果的なオイルクーラーを装備。

ライダーの疲労を軽減させ、低振動に寄与する一軸バランサーを装備。

キックスタートを容易にするオートカム・デコンプ機構を装備。

<フレーム>
●軽量・スリム・コンパクトな車体と、軽快な旋回性や走行安定性を実現したセミダブルクレードルフレーム。

ホイールベースは、1425mmに設定。XR250Rに比べ僅かに25mmの延長にとどめたコンパクト設計としている。

リアフォークピボットは、エンジンを直接取り付ける同軸構造を採用。エンジンマウント用のクロスパイプやステーを

不要とすることで、軽量化を図ると同時に、リアタイヤが路面から受ける衝撃を直接エンジンで受け止めている。

これらによって、全体的に高いフレーム剛性を確保しながら、ピボット部の剛性を適度 に低く設定することで路面からの

衝撃を吸収しやすい操縦安定性に優れたものとしている。

リア・サブフレームは、ボルト・オンタイプとすることで、リア・サスペンションのメンテナンス性の向上を図るとともに、

転倒によるダメージが発生した場合でもリア・サブフレームの交換で対処出来るなどより実戦的なフレームとしている。

<サスペンション>
●オフロードでの走破性に優れ高い剛性の前・後サスペンション。

フロントは、φ43mmの正立ハイブリッドタイプを採用(ストローク280mm)。

カートリッジタイプのダンパーによって、路面追従性と限界性能の向上に寄与している。

圧側16段階、伸び側12段階 調整機能付き。

 リアは、熱ダレしにくいピギーバックタイプのダンパーを装備したプロリンクとすることで、乗り心地に優れ限界性能に

優れたサスペンションとしている。(アクスルトラベル300mm)

圧側18段階、伸び側16段階の減衰力調整機構を装備することでセッティングの範囲を広くしている。

主要諸元 通称名 XR400R
車 名・型 式 ホンダ・NE03
全長×全幅×全高 (m) 2.165 ×0.820 ×1.250
軸 距 (m) 1.425
最低地上高 (m) 0.310
シート高 (m) 0.930
車両重量/乾燥重量 (kg) 121/112
乗車定員 (人) 1
最小回転半径 (m) 2.1
エンジン形式 NE03E(空冷・4サイクル・OHC・単気筒)
総排気量 (cm3) 397.2
内径×行程 (mm) 85.0×70.0
圧縮比 9.3
最高出力 (PS/rpm) 40/7,500
最大トルク (kgm/rpm) 4.21/6,000
キャブレター型式 PD36
始動方式 プライマリーキック式
点火方式 CDI式マグネット点火
潤滑方式 ドライサンプ式
潤滑油容量 (L) 2.2
燃料タンク容量 (L) 9.5
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式5段リターン
変速比 1速 2.615
2速 1.842
3速 1.400
4速 1.120
5速 0.926
タイヤサイズ 前 80/100-21 51M
後 110/100-18 64M
ブレーキ形式 前 油圧式ディスク
後 油圧式ディスク
懸架方式 前 テレスコピック式
後 スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式 セミダブルクレードル

=ディメンション比較=
      通称名XR250R        通称名 :XR400R


型式
ME 06
全長×全幅×全高 (m)
2.100×0.910×1.225
軸距 (m) 1.425
最低地上高 (m) 0.325
シート高 (m) 0.925

車両重量/乾燥重量 (kg) 116/108
乗車定員 (人) 1
最小回転半径 (m) 2.1
エンジン型式 ME 06 E(空冷・4サイル・
OHC・単気筒)
総排気量 (cm3) 249
内径×行程 (mm) 73×59.5
圧縮比 10.2
最高出力 (PS/rpm) 30/8,000
最大トルク (kgm/rpm) 2.5/7,000

10モード燃費:30〜32km/L

パワーウェイトレシオ:3.86kg/PS


型 式
NE03
全長×全幅×全高 (m)
2.165 ×0.820 ×1.250
軸 距 (m) 1.425
最低地上高 (m) 0.310
シート高 (m) 0.930

車両重量/乾燥重量 (kg) 121/112
乗車定員 (人) 1
最小回転半径 (m) 2.1
エンジン形式 NE03E(空冷・4サイクル・
OHC・単気筒)
総排気量 (cm3) 397.2
内径×行程 (mm) 85.0×70.0
圧縮比 9.3
最高出力 (PS/rpm) 40/7,500
最大トルク (kgm/rpm) 4.21/6,000

10モード燃費:17〜20km/L

パワーウェイトレシオ:3.02kg/PS



----------- - ----------- - ----------- - ----------- - ----

スーパーXRの250と400が発売されてやはり主流は250になってしまう、400は元々パワーがあるので

必然的に開発は250の方を優先した。1年も過ぎると400でも早々にオーバーホールなり HRCキットの

組込み依頼でエンジンを開ける機会が増えてきた。するとエンジン内部の作りが今までのXR系とは違う事に

気付く、それも極力軽く無駄の無い工夫があちこちに見て取れる。また強度の要る所にはコストが掛かっても

最善の方法が施され クランクケース内のつくりには基本的は250をベースに400に必要な強度に

手直しされている。これはXR開発陣は本気で作っとる 凄いぞと400の魅力に一機に引き込まれた。

ホンダオフロードモデルのミドルクラスは従来600クラスに酷似したディメンションが定番であった。

特にキャスターが寝ているのでハンドルを軽量車のようにコジって乗るとアンダーが出てフロントのグリップを

失ってしまう。こういうレイアウトはエンジンパワーでテールスライドさせて方向を変える設定です。

しかしXR400R以前のXR350Rなどはそこまでのパワーも無いのでどっちつかずであった。

ME08やNE03の通称“スーパーXR”になってウッズランを想定して設計された為 キャスターが立っている。

250ccクラスのように小回りが効くレイアウトに変更された、↑上図の諸元比較を見て欲しい。

ME06とNE03はディメンションがほぼ同じに出来ている、実質XR400Rに着座してみると250に比べ

シート高が高いので視線の高さを感じ コーナーなどの寝かし込みに違和感が出る。そこで3cmダウンリンクに

入替え フォークの突き出しを同時に行う事でME06と同じポジションに出来る。XR400Rはサスが硬めに

設定されている為このリンクを入れる事で圧縮レートが下がり 従来のXRらしいしなやかさにも出来る。

車高は下げるのだが最低地上高はそれでも充分確保されているのであらゆるシチュエーションでも

アンダーフレームへのダメージの心配はご無用。


エンジンフィーリングは250の強力版で振動も無く高速まで一気に吹き上がる、旧350は600のビッグシングルのように

脈動し吹き上がりも鈍かった。クランクにダイナミックバランスを導入されている為振動は極力抑えられ 基本設計は

250のスケールアップ版である事が随所に見える。フライホイルも外径で慣性を確保出来る為 重量は比較的軽い。

XRシリーズの中で650R(後発機種により)を除き 技術的には群を抜く作りが投入されている。

オイルラインはエンジン内に隠され クラッチ交換もオイルを漏らさず特殊工具も使わず交換出来る。

またクラッチヂャダー対策も400ならではの構造で容量を減らす事無く構成されている(ヂャダースプリングを使わない

手法)。そしてボルト類の兼用を計り軽量化を徹底し また強度が要る所には要所要所に植え込み式のスタッドが

採用されている。

ロッカーアーム特にエキゾースト側はME08より軽量なつくりで追従性を向上されている。またオートテンショナーは

シリンダー側面に付くタイプで整備性の向上とトータル重量の軽減が計られている。

冷却系はヘッドの裏(プラグ部分)にはヘッド上部左右にエアポートが貫通しており 燃焼室肉厚も均一化が計られ 

表面積も大きく取られている。

ブリーザー経路は独自のもので排気面積は600よりも大きく取られ ピストンの摺動抵抗低減を計っている。

400ccで40PSと控えめだがエンデューロ仕様ということで圧縮なども9.3と抑える事でパワーよりもトルクを増す

設定で ホンダ系オフロードは昔からこの傾向が強い、それと同時にヒート対策や再始動性を考慮しての設計だと

思われる、600の最高峰RS600Dのパワーの秘密はヘッドの温度を安定化させる事が大きな役割を果たしている、

(600ノーマル40PSに対し60+αPSと20PS以上も向上されている)。

このノウハウも勿論この400にも継承されている。(HRCキット組込みで4.5PSアップを実現している)

XR400Rもレーサーとはいえ排気ガスの考慮も入っており8.000rpmでC.D.Iリミッタ−が効いてしまうのが残念だ。

また ホンダRFVCエンジンはデザートランでの全開走行でリアタイヤが路面から離れた折

空かきしオーバーレブしてもバルブは突かないようにバルブとピストンのクリアランスを充分取られて設計されている。


注)RFVCエンジンの特徴はロッカーアームとカムの間にサブロッカーアームを挟む構造でバルブの突き出しを等速で作動させる役割を持つ。

本来250並みのレシオ10.5前後、吸排気系のチューンのみで45PS前後は無理無く普通に出る作りではある。

それでもエンジン設計的には充分余力(安全マージン)を残したものである事は言うまでも無い。

オイル容量も600と同量の容量を持ち オイル潤滑の鉄則:多くの量を速く回すという基本を忠実に守られている

(オイル性能維持を安定化)。

欲を言えばミッションは250同様6速仕様にして欲しかった。ホンダオフロードミドルクラスは350も同様で

1次減速、ミッション、2次減速と250・600とはまったく異なる設定になっている。

特にリアスプロケットは最小37Tは250・400・600・650は同様だがメーカー設定のコンペ仕様は250・600・650

は48Tだが400は45Tの設定だ。公道走行の設定は全機種40Tでミドルクラス以外は8Tの幅があるのに対し

400だけが5Tの幅しかない。また初期の‘96 97モデルはクラッチに供給するオイル量が少なく焼く人と焼かない人

の線引きがはっきりと分かれたが‘98から増量されて改善された、またキック関連のトラブルも出てきたのでコレも

‘98以降から強度アップされている。極稀にオフのみの酷使されたものに関して2・3速のミッションが割れるものが

出てきている(通常の使い方では問題は無い)。

以上 中身の工夫された独自構造や250cc並みのコンパクトな車体、250のようにキビキビ回るエンジン 耐久性と

ハイパワーの両立。

日本国内でのあらゆる使用には身の丈に合ったジャストサイズの“ホンダが作った最終進化型”である事が分かって

もらえたと思います、これぞ最後のXR。


カムジャーナルもカムのタワミ止めに1箇所多い設計

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

=お気に入りのバイクを究極にまで突き詰め作り上げてゆく楽しみ=

‘98 国内限定コンペモデルを対象にHRCからパーツが販売されていた(残念ながら現在は生廃となっています)

海外で同じものが先行販売されていましたが日本円にして約14万近い価格でした、
国内限定キットがいかに安かったか良く分かる。

当時の雑誌記事


HRCハイコンプピストンは社外品と違い400専用設計で鍛造製でありながら均一な膨張をするように
作られている。耐久性も高くオイル消費もノーマルと変わらない。


対し 社外品ピストン(303g)は上映像↑のように肉厚が厚く無駄肉も多い、専用であって本来の専用では

有りません。この肉厚差により金属膨張も均一では無い為特にピン方向が空き圧縮漏れ オイル消耗も多くなる。

HRCのような優れたパーツが有る限り スタンダードで使えるハイコンプはお勧め 是非体験して欲しい。

ボアアップはオーバーホール時に組んでも遅くないのとエンジンフィーリングが異なります。

HRCピストンはハイレスポンスで気持ちよく回るのに対し ボアアップ社外ピストンはトルク型の方に向いて

行く方向になります。また HRCピストン(ノーマルピストンより4g軽量)に加え当店では軽量ピストンピンを

組み合わせる事で より一層軽快な回転が得られるようになりますし ロングライフ化する為に各スリット加工

も可能です。

HRCピストンは今となっては生廃になっていますがオークションなどで手に入れられれば是非お勧めします。


また空冷は表面積が命 よりハイパワーと安定した性能を引き出す為にヘッド、シリンダーに
ビッグフィンタイプも在る(フィン枚当たりの面積が大きく 枚数も1枚多い)。

XR400R用社外品(鍛造製) ピストンラインナップ・・・STD85mm

 85mm  STD  10.5:1  397cc
 85mm  STD  12.0:1  397cc
 86mm  1mm+  10.6:1  406cc
 87mm  2mm+  10.8:1  415cc
 87mm  2mm+  12.0:1  415cc
 88mm  3mm+  11.0:1  426cc
 88mm  3mm+  13.0:1  426cc

※440ccピストン・スリーブキットも有るが圧縮抜け、スタッド抜け上がりなどが発生している為当店ではお勧め出来ません。
また いつまでも↑上記ピストンキットが在るわけでも有りませんのでご注意下さい。

=オイル潤滑系=

ノーマル潤滑がドライサンプ形式採用により安全マージンがグンと増した上に 当店ではオプションで強化オイルポンプ

(吐出量増加)に加え 高回転化出来る駆動ギアセットも在る、またリターンパイプもノーマルに比べ倍の面積を持つ

モノも在る(この場合オイルクーラー廃止〜ノーマルオイルクーラーも無いよりはマシ程度のものなので 効率を優先し

こちらの方が効果大)。この仕様に伴いヘッドに供給するオリフィスを加工し 高負荷時のカム、ロッカーアームの油膜

切れを防止対応する。チューニングするしないに関わらずどんな過酷な状況下でもロングライフ 壊さない事を実現する

には是非抑えたい基本である、この部分においてはやり過ぎは無い。

=カムシャフト=

前述のようにHRCカムはすでに生廃だが 今はそれより高性能な社外品が存在する。それには強化バルブスプリングも

同時交換が条件になるが パワーカーブも一ランク上の性能を誇る。カムを選択する上において加工カムは避けたい、

強度も低くノーマルカム寿命よりも短いモノが多い。また作用角、リフトやカム形状がナニを示すか把握していなければ

自分が思うフィーリングが得られないので要注意。


=余談=

当時毎年BAJA1000に自費で参加している方が従来から乗っていたCRM250ではYZ400Fの登場によりストレートでは到底太刀打ちが出来なくなった。そこでXR400Rに乗り換えたがやはりノーマルではYZにはこころもたない。そこで当店にチューンの依頼が来た訳です。チューニング目的は「ストレートでYZをブチ抜ける事」それだけだった。内容に注文は付けないので自由にやってくれ と言うことだった。私の構想ではエンジンのバランス取り&HRCパーツで充分いけると判断。ミッション(この頃はクロスミッションは無かった)、クランク、バルタイ、ポートなど直接パワーを上げるパート それを補助するパート エンジンを保護するパートこの3要素をうまく組み合わせれば“壊れずにハイパワーを維持出来るエンジン”が実現出来るのです。結果アクシデントが有りその年の成績は残せなかったものの公約のYZはストレートでパス出来 非常に気持ち良かった と現地から手紙が届いた。その後翌年のBAJA1度(総合で十位台)と国内レースを含め2年間ノーオーバーホールで走りきったそうだ。現在その功績が認められUSホンダワークスのCRF450Xに毎年乗っている(ウチの出番が無くなって寂しいかぎりです)。


To be continued.


戻る