ウチの300が違う訳
今となってはもう種明かしをしても良い時期なのでココに記してみよう。
今 ちまたで売られている鍛造ピストンは「専用であって専用で無い」製品なのです。
コレは昔から言っている事です。
と言うのも例えば鋳型で70〜75mm用の型からY社用72mmピストンを作り また同じ型で
K社の75mmピストンを造るという型式をとっているのです。要はその機種に合うというだけで
純正のように温まったら真円になる造りでは無いということです。いまさら言う事では有りませんが
ピストンは冷間時 進行方向を横に見ると台形で 上から見ると楕円になっています、これは肉厚の
差による膨張を見越したもので コレに上記のような肉厚の膨張を無視した外品ピストンは温まっても
真円にならず 特にピストンピン方向に隙間が大きいのでガスの吹き抜けが組んだ時から起こるのです。
ガスの吹き抜けが起こるということはオイルも同時に食っているという事です。
鍛造でもウチで敬遠するものはワイセコ コスワース アリアスなどです。
しかし300のピストンは社外品鍛造でそのまま組めば例に漏れずオイルを食います、
それ以前にすごい振動で回せないエンジンになりますが・・・
そこで対策としてどうすれば良いか・・・
当時ウチの常連で旋盤士がいたので私が言う手順で加工が出来るかどうか聞いてみた。
・まず旋盤にピストンのセンターを出し固定(治具造り含め)
・ピストンを暖め○○度で安定させる
・そしてピストンを真円に削る(ボア最大値)
以上が出来るかどうか聞くと「出来る」と言う。
そしてやったものが出来上がってきた。
しかし「二度とやりたくない」と言う、そりゃそうだ 普通のところで出来るわけ無い加工だ。
これで300の全寸法のデータが取れた、これに限りなく近い値まで修正して組むので
他の鍛造ピストンよりオイルも食いにくいし首振りも少ない。
ただしノーマル鋳造と同様と言うわけにいかない、鍛造と鋳造では膨張率が倍ほと違うからだ。
ただし例外があり純正オプション(ホンダならHRC)は良く出来ていてノーマルと同じだ。
プラス クランクの軽量を兼ねたボアアップピストンに合わせたクランク加工でノーマルのような
振動を極力抑えた回転バランスの良いエンジンが作れるのです。
ただし持ち込みのピストンには上記の加工は行いません、ウチで紹介しているものは
ウチで扱っている物ですので・・・ どうせやるなら私の気の問題です。
------------ Icing on the cake -----------
永くやっていると色々あるもので エンジンのみの通販で250RFVCエンジンに270を組んで出した件があった。
フラットトラック専用に使っていたようだがしばらくしてマフラーから薄い白煙がたまに出るという。
自分で腰上をばらしたらシリンダー内寸は合っているがピストンが小さい物が入っていたと言う。
そのシリンダー、ピストンの実測値も言っていたが有り得ない事だ。加工工程でも入れ違う事は
無いし 組む時に明らかに分かる事。電話での一方的な苦情だった 現物が目の前にあれば
すぐ分かる事なのだが・・・ 「外品の鍛造ピストンを買って組んだら調子良く走ってますわ。
期待を裏切られて残念です」と一方的に切られた。どう考えても有り得ない事で「あっ」と思い当たる
事があって同じ270のピストンを測ってみるとビンゴだった。それはピストンヘッドで測った寸法で
進行方向ピストンスカート部では無かった。ピストンを何処で測るか知らないド素人に一方的に
言われたい放題言われて 挙句に「残念です」と・・・ その言葉 そのままお返しするわ。
白煙が出たのも聞いた内容では慣らし無しでお約束のパワーフィルターで砂吸いまくったせいだろう。
昨年 エンジンのみの通販を辞めてから本来のユーザーがウチにも帰ってきて平穏を取り戻している。
この2年ぐらいは“ものを知らないバケモノ”が増えて戸惑っていたが 誰でもお気軽に門戸を
開いていては困った事になる時代が来たようだ。最低ウチが本来何屋か知っているユーザーのみに
限定してやっていく事にした。
もうこりごり
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