消費税変更前にMD30のチューニング依頼があった。
ドノーマルから一番高かった頃の逆車並の改造費内容、エンジンはもとよりサス、ブレーキ、排気系
ポートやリミッター解除 ”通勤特急”に至るまで内容は充実している、その中に「セルレスキット」が入っていた。
最近はキックでエンジンを掛けられないのが普通なのでユーザーさんにはお勧めしていないのだが
ユーザーさんの希望なので一抹の不安はあったが希望メニューで組む事にした。
当初これだけの内容に関わらずメールだけのやり取りであったが欠品などのパーツもあったので
電話をした。エンジンをキックで掛けられるかな?と聞くと「多分大丈夫でしょう 動画も見ているし」
と言う事だった。私は出来れば一度は来店して欲しい その時掛けれれば良いし 掛けられなければ
レクチャーしなければならない。出来た車両を運送便で送った後「エンジンが掛からない」と言われても
電話ではお手上げだ。しかしこのユーザーさんは快く来てくれると言う事で快諾してくれた。来店まで
いろいろあって2〜3週間あっただろうか、その間パーツを組んだだけの内容で引渡し後 慣らしにも
ならないような扱いで不具合が出て対応したりで凹む事があった。個々で“やったつもり”の感覚の隔たりが
大きく クレームのような事を言ってくる人がウチにも来始めるようになってきた。
このMD30のユーザーさんは東京なので慣らしの為高速は控えて欲しいと言うことで下道で帰ると言う。
一度来てもらってエンジン始動確認後 車両は送るというのはいかがですかと聞くと出来れば乗って帰りたい
と言うので様子を見る事となった。
来店当日 お昼過ぎに来られて一通り説明 ひとまずは車両に乗ってインプレをしてもらった。
「車両の感覚が非常に軽い」と好評価であったのでひとまずは一安心、さて問題のエンジン始動だ。
私が数度掛けて見せていよいよ本人、やはり心配どおりエンジンは掛からない しかし すぐに
手順は覚え極稀に掛かったりするようになった。しかし暗礁に乗り上げたと思っている時にウチの
お客さんで400乗りIさんが来たので IさんにMD30のエンジンを掛けて見せてもらった。勿論すぐに掛かり
私とIさん 二人で何が足りないかをレクチャー、するとIさんの指摘でエンジンが掛かるようになった。
それもコンスタントに 一時はどうなるかと思ったがこれで一安心だ。夕方近くになったが帰路に着かれた。
ユーザーさんの根気 弱音も吐かず ただ直向に・・・アッパレであった、久々に“男”を見たような気がした。
聞くと私と同い年、流石昭和の育ちは筋金入りだね。
翌日の朝7時に家に着いたとメールが入っていた。お疲れ様。
後日インプレのメールが入ったのでここにご紹介します。
田口 様
京都からの帰りの道中楽しかったです。
まず一番感じたのは軽いということです。
車体も軽いし、エンジンのレスポンスも、もの凄くよく、それが軽いという表現になってしまいました。
特にエンジンのレスポンスはすごいの一言です。右手にそのまま反応するんですもんね。
乗っていて楽しくて楽しくて500kmの道のりもあっという間でしたよ。
辛かったことといえば睡魔との闘いと、あと、お尻が痛かったことです。
こればかりはヴァイタルさんでもどうしようもないですね(笑
私みたいな普通の一般ライダーにも、というか一般ライダーにこそこのすばらしいフィーリングを味わってもらいたいですね。
あと1500Kmの慣らし運転が辛いです。早く air charger system を試してみたいです。
Iさんがヤフオクに出すことを期待されているみたいですが、あきらめてくださいとお伝えください。(笑
(コレはエンジン始動中に
Iさんが冗談で言った事で エンジンが掛からないので諦めて
オークションに極上中古として出さないかなぁ〜 出たらすぐに買うのに と言った事に対し
)
次のステップのスーパーデルタプロリンクですが、
云々・・・
以下 パーツの相談(省略)
追伸: こちらは渋滞が激しいので、オーバークーリングシュラウドの作成心待ちにしています。
私としては作ったものが喜んで頂ける事が最大の喜びです、1台1台こういったXRが世に出てゆく事にも
やりがいがあります。勿論1台1台手作業で手掛けていますので時間は掛かりますが あと10年・・・
何台作る事が出来るか 自分との戦いです。
------------ Separate case -----------
数ヶ月前 雪山を2ケツでトライしたユーザーが頂上付近で「コッキーン」とエンジンが止まったと
連絡が入った。2ケツだけにトラクションが良くグイグイ登って行ったようだ。スタンド無しで単車が
立つようなところまで入ってでの出来事。雪でエンジンを冷やしUターンして再度エンジン始動。
このMD30は↑上記のようなチューニング+セルレス デルタプロリンクまで搭載、エンジン始動は
勿論キックだ、このユーザーもエンジン始動に慣れるまでしばらく時間が掛かった人だったが
エンジンが掛からなくなったら押してまで来る根性のユーザーさんだ。ウチに来ればすぐにエンジンが
掛かるので「自分の掛け方が悪い」と理解しているので有り難い。
エンジンが冷えてから掛かったようですぐに下界のコンビニ近くまで帰ってきたが再び「コッキーン」!
JAFを呼んで当店に搬送。その時に本人が「ピストンにサイドスリット加工していたから命拾いした」
「やっていて本当に良かった 死ぬかと思った」と言う。エンジンオイルを見るとほとんど入っていなかった。
焼付きだ、聞くと年に1度ぐらいしかレベルチェックしていなかったそうだ。それは流石にマズイ。
せめて週一乗ったとして月一は見て欲しい。以前スリット加工を薦めた時私の経験談を言っていた
事を思い出した。200で初めて加工した私のバイクが雨のレースでクランクケースが割れていたのに
気付かずレース終盤1周に一度エンジンが止まるようになった、5周ぐらいした時に気が付き何とか
レースを終えた。しかしオイルに水が混ざり焼きついている事は分かっていたが5回はエンジンストール
しているのでシリンダー&ピストンはガリガリになっている事は覚悟した。エンジンを開けたが
見た目は何とも無いが当たりがきついぐらいだ。スリット加工のおかげで特有の引きずり症状は無く
5回もロックしたのにワンオーバーのボーリングで済んだ事があった。
オイルが切れてもこのスリットの間にオイル溜まりが出来て張り付き難くなるのと 通常は
フローティング作用があり ピストンの摺動抵抗を軽減するのが役割だ。
かつていろいろチマタに流行っている加工も試したが一時の効果しかなくスリット加工が
一番効果が持続すると結論を出した。その焼きついたパーツをご覧頂こう。
流石にカムシャフトは焼けてガリガリ
コレが2回焼きついたピストンに見えるだろうか
スカートのカケが無ければボーリング出来たのに・・・
最近ハイスピードで走行中 オイル切れで入ってきた焼き付いたピストン
スリット加工は強し
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