=エンジン腰下組み上げ作業開始=

まずクランクケースですが元のケースのクランクベアリングが圧入されている部分がやや甘くなっていたので

しっかりした別のクランクケースに入替えることにした。

オーバーホールを怠っているクランクケースは手で簡単に外れるほど甘くなっているモノが多く

このようなケースはクランクセンター出しをしても意味が無くすぐに狂ってしまう。

開いていないケースはクランク加工などを施せば回転の延びが変わってくる。

それとともに振動を抑える事でエンジンを含む車体各部の緩みや寿命も延びてきます。



ベアリング類はAll New クランクベアリングは“T. collection”のラスト1セット
(すでに生廃品)

高速ベアリングを打ち変え。

それにケース内の圧力を早く抜きピストンの上下運動の妨げにならないようにブリーザーを増設加工。

ちなみに長年XR系に使われてきたクラッチハウジングの付け根のベアリングがゴソウダンパーツです。


クランクケースには中古ですが程度が良いME08を使います、MD30に比べ硬度が高いからです。

製造工程の釜圧がMD30より高い為 錆び難く硬い。

ただME08はニュートラルスイッチが無い為 取り付け加工します。


通称“男のクロス”クロスミッション
(すでに生廃品)を組み込み そしてWPC加工(実施中断)、実に贅沢仕様

270ccまでの排気量にはこのクロスが相性抜群。



続いてクランクシャフトについて

クランクシャフトはコンロッドを除いて3つの部品で構成されている。

左右のクランクウェブとそれを繋いでいるコンロッドピンです。

ただの圧入方式で挿入されている為 クランク単品にすると少しの衝撃で左右の軸センターがヅレてしまいます、

それだけデリケートな部分なのです。


上の太いピンがそのコンロッドピンです。

クランクセンター出しとはその左右のウェブの軸センターをゼロに合わせ芯を出す事です。

クランクをチェックする上でコンロッドの大端部の横ガタの有無です。

このクランクには問題ありませんが許容範囲はありますが一度だけ修正が可能です。



MD30のバランサーにはバックラッシュギアが付いています。

バックラッシュのクリアランスは無くなりますが回転の抵抗はかなり大きくなります。

ME08などのレーサーには付いていませんので軽量化を兼ねて取り外します。

これによってギア鳴りが発生する事はありません。


シフトドラム・シフトフォーク・シフトシャフトにはWPC加工済み

シフトフォークはシャフトに通し曲がりの有無をチェック。

シフトカムはシフトが抜け難い強化型


クランクケースの中のパーツは以上です。

それでは組み上げです。


クランク挿入のやり方はシークレットですが微妙な衝撃も与えず入れる事が重要です。


そしてクランクを上死点に向け クランクとバランサーの合わせマークの位置を合わせます。

ノーマルは微妙にズレているものがありますのでキッチリ合わせるのがポイントです。

※クランク・バランサーの合いマークの刻印は信用出来ます。


続いてミッションを組み込みます。


そしてシフトドラム・フォーク・シャフト・スピンドルを組み付け

スピンドルの動きをチェックしておく。


センターガスケットを乗せRクランクケースを合わせます。

センター出しをしたクランクを本来のカタチで組み付け出来ていればRケース取り付けに

力は要りません スル〜と抵抗無く入ります。

※クランクケースの加工精度は信用出来ます。


最終クランクケースの合わせ面とクランクのセンターが合っているかを確認。

そしてクランクが抵抗無く回るかも確認。

------------ 続いて -----------

次はクラッチ側


長持ちの要 オイルポンプのオーバーホール

芸能人は歯が命 バイクはオイルポンプが命です。


トロコイドのインナーを見れば一目瞭然 大きな凹み傷が・・・

このような状態では2〜3割の吐出量の低下は否めません。

オイルポンプはエンジンの心臓です。

二層式ですので(上映像↑の赤○×2ヶ)トロコイドを新品に交換しますが現在すでに生廃パーツです。

油膜切れを起こさないようにするには まずはオイルの質、次に吐出量アップ、より多くのオイル量の確保です。

これによりオイルのヘタリ(劣化)も防げます。


GHA加工アルミクラッチにFCCクラッチディスク ST-1

GHA加工アルミクラッチは4つのメリットがあります。
1.)最大の特徴は半クラでのクラッチミート時 喰い付きは抜群です。(ノーマルとは比較になりません)
2.)重量がスチールの1/3でフライホイル超軽量加工と同じような速い加速の効果があります。
3.)表面硬度がステンレスの3倍で表面の凸凹が減る事無く半永久的に使えます。
(保障の限りではありませんが)
使っているウチにクラッチが滑るような事があればディスクのみの交換でOK。
4.)1枚の厚みがノーマルより0.1mm厚いのでトータル厚が増しクラッチスプリングを通常より
圧縮する事により強化の役割もします。

デメリットがひとつ:財布に痛いと言う事です。


クラッチバスケットの段付きやスプリングのヘタり ギアなど確認。

クラッチバスケットが高回転に振らないようにカラーも新調。

以上 組み付け


強化チェーンテンショナー 強化カムチェーン O/H済みオイルポンプ 強化シフトカムなど組込

ストレーナーの掃除も必ず行う事。

強化キックギアだけは無いので残念でならない。


クラッチ周りの組込と 今は無き“対策クラッチリフター”


オイルフィルター交換の後 クラッチカバー取り付け

------------ フライホイル側組込 -----------


左がノーマル 右が超軽量加工にセル機構ワンウェイクラッチ&ギア削除

セルレスですので右図の姿で組み付けます。

どのくらい削れているかはお見せ出来無いのが残念ですが 言うまでも無く激軽です。


フライホイルカバーもセルレス用に加工 要らない部分を削除しています。


以上で腰下の完成です。

------------ Then -----------

数日後締め付けたボルトが馴染んだところで6o軽量スチールボルトに入替えます。


ホイルのスポークが1本折れるとその周りから緩んでいくのと同じように
黄色い○
部分がシリンダーのスリーブが入る穴が開いています。
緩み止め効果の意味も含めノーマルより長い6o軽量スチールボルトを使います。


腰下完成


ここまで通常一般のユーザーさんが依頼されたとすれば概算工賃込み¥319.670‐(税別10%)也
※キックパーツ(セルレスキット)は含まれません。


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