エンジンの良し悪しは分解時の状態、行程ですべて分かる。
その諸因を踏まえながら組み上げ時の構想を組み立て 行う。
このエンジンは5.000kmしか走っていないものでオーバーホールを兼ねる距離ではない。
しかしながらピストンサイドのコスレ具合 圧縮漏れの状況を見て新調する事にする。
まずクランクケース回りから
各ベアリングのチェックを行い 高回転や吹き上がり時に抵抗になる内圧をいち早く低減させる為にブリーザーの
拡大化を加工、勿論その延長上に「大口径ブリーザーキット」を装備させる。
勿論クランクセンター出し作業を行い バランサー位置を確認し ほとんどがズレを生じているので0に修正してやる。※クランクとコンロッドの角度も測定し 修正も可能
また ボアアップなどに伴う(ピストン重量アップ、摺動抵抗アップ、爆発圧アップ)ノーマルクランクとの重心バランスの
狂いが生じ振動が出るので 軽量を兼ねた重心合わせ(呼称:レーシングクランク)と言う加工もケースによって可能である。
ミッションについては各シャフトのセンター(振れの有無)を確認し ギアのバックラッシュを適正クリアランスに修正。
ミッションをケースに組んだ時にドライブシャフトを勢い良く回すと止まるまで回転の余韻が出るほどロスが軽減される。
この作業により発生したエンジンパワーをミッションのフリクションロスによる低減率を大幅に低減出来る。
シフトフォークの角度も測定しズレが有る場合は修正、シャフトはクリアランスに影響が出ない範囲で細密研磨を施工。
この作業によりフォークの動きが軽くなり シフトタッチが軽くなる。
そしていよいよクランクをケースに入れるわけですがこの作業の良し悪しでほぼ5割は決まってしまう。
クランクベアリングには高速ベアリングを使用。
クランク圧入時はクランクに少しでも衝撃、応力を与えてはならない、すぐにズレてしまうほどデリケートなパートだからだ。
クランクを上死点にしバランサーとの合いマークにズレが無いかどうか確認。
クランクケースを合わせる時にこれらすべてベストの状態になっていれば何の抵抗も無くスコッとすんなり入る。
ケースを合わせる時取り付けボルトに緩み止めのワッシャを追加してやる。
コンロッドのセンターとクランクケースの合い面が合っているかを確認。
オイルポンプのトロコイドや隔壁にキズの有無を確認し 場合によってはクリアランスを詰め 10%近くの吐出量アップも可能。
新品の強化カムチェーン&テンショナーに入替え、また確実なシフトにする為に強化シフターも装備。
クラッチは耐久性に優れたFCCクラッチディスク&GHA加工アルミクラッチを投入。今回の場合は250ccベースなので
採用は見送ったが強化キックギアと言う選択肢も有る。オイルストレーナーも必ずチェックし クラッチセンターリフターピン
は抵抗の無い位置を出す。
ピストンは新調し圧縮漏れ防止のコンプレッションスリット、ピストンサイドには摺動抵抗低減&焼付き防止にサイドスリット
加工を施した、ピストンピンには軽量タイプを投入。
ノーマルシリンダーにはクリアランスが大きくならない程度に超細密加工を追加加工、シリンダーの空き長持ち対策を実施。
そしてシリンダーはすわりの良い位置出しを行い設置、ピストン上死点を測定し「本当のTマーク」を刻印。
高回転までストレス無く回せるフィーリングにする為 当店の強化インナーバルブスプリングで補強対策。
及び オートデコンプ機能が機械的なリミッターになっているのでそれを削除、オートデコンプ削除後大きなオイルポートが
2箇所開いているのでそれを塞ぐ。この塞ぐ加工はアルゴン溶接が適しているが一部分とは言え高温に横のカム山が
さらされる為焼き入れ加工も同時に行う。そして排気側のカジリ対策にカム山のオリフィス加工&吸出し効果がある
面取り加工も行っておく。またオートデコンプ亡き後 ロッカーアームのバランスを取る為不要になった部分を削除。
キーポイントはバルブとシート面の当たり幅だ、勿論メーカー指定の寸法とは異なり 「長く気密性を保てる」加工を
施す。いかに有効な圧縮を維持出来るかがポイントとなる。
そこで最後の仕上げ;ほとんどのXRはカムタイミングがずれているのでベストの位置に合わせ固定してやる。
またエンジンを組む時点で純正マニュアル通りのトルクでは行わない、独自の手法で施工。パッキンなども気密性が
上がりつつ 張り付かない手法で施工。あとはエンジンを搭載しキャブセッティングを行う。
この後の作業で“慣らし”いかんでこれまで施した作業が実るかどうかが決まってくる。
こうして作り上げたのがこの↓XR250R ME08です。