極める


XR400R編=

XR250R同様 ノーマルベースのお任せチューニング依頼パートU。

「永く持っておきたいので XR400Rのノーマルベースで性能を最大限引き出して欲しい」

と言うものだ。

ここにその手法を紹介してみよう。


エンジンの良し悪しは分解時の状態、行程ですべて分かる。

その諸因を踏まえながら組み上げ時の構想を組み立て 行う。

このエンジンは3.000km前後しか走っていないものでオーバーホールを兼ねる距離ではない。

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まずクランクケース回りから

各ベアリングのチェックを行い 通常、高回転や吹き上がり時に抵抗になる内圧をいち早く低減させる為にブリーザーの

拡大化を加工するが、400の場合はその必要は無い。400のみ構造が異なりブリーザーの通路が大きくルートも異なる。

勿論その延長上に「大口径ブリーザーキット」を装備させる。

250同様クランクセンター出し作業を行い バランサー位置を確認し ほとんどがズレを生じているので0に修正してやる。
※クランクとコンロッドの角度も測定し 修正も可能

また ボアアップなどに伴う(ピストン重量アップ、摺動抵抗アップ、爆発圧アップ)ノーマルクランクとの重心バランスの

狂いが生じ振動が出るので 軽量を兼ねた重心合わせ(呼称:レーシングクランク)と言う加工もケースによって可能である。

ミッションについては各シャフトのセンター(振れの有無)を確認し ギアのバックラッシュを適正クリアランスに修正。

400の場合 ミッションを酷使すると2〜3速が割れるという事例が出ているので 対策を兼ねて今回はレースや

一般道でローから使える“強化型クロスミッション”と言う名の「強化ワイドミッション」も組み込んだ。

ミッションをケースに組んだ時にドライブシャフトを勢い良く回すと止まるまで回転の余韻が出るほどロスが軽減される。

この作業により発生したエンジンパワーをミッションのフリクションロスによる低減率を大幅に低減出来る。


↑映像は250

シフトフォークの角度も測定しズレが有る場合は修正、シャフトはクリアランスに影響が出ない範囲で細密研磨を施工。

この作業によりフォークの動きが軽くなり シフトタッチが軽くなる。

そしていよいよクランクをケースに入れるわけですがこの作業の良し悪しでほぼ5割は決まってしまう。


↑映像は250

クランクベアリングはクランクセンター出しに伴い 新調しておく。

クランク圧入時はクランクに少しでも衝撃、応力を与えてはならない、すぐにズレてしまうほどデリケートなパートだからだ。

クランクを上死点にしバランサーとの合いマークにズレが無いかどうか確認。

クランクケースを合わせる時にこれらすべてベストの状態になっていれば何の抵抗も無くスコッとすんなり入る。


↑映像は250

ケースを合わせる時取り付けボルトに緩み止めのワッシャを追加してやる。

ピストンには確実な仕事をしてくれる“サイドスリット&コンプレッションスリット”を加工。

コンロッドのセンターとクランクケースの合い面が合っているかを確認。


↑映像は250

オイルポンプのトロコイドや隔壁にキズの有無を確認し 場合によってはクリアランスを詰め 10%近くの吐出量アップも

可能だが 400の場合は強化オイルポンプに高回転型ポンプギアがあるのでそれを追加。

新品の強化カムチェーン&強化カムスプロケットに入替え、また確実なシフトにする為に強化シフターも装備。

クラッチは耐久性に優れたFCCクラッチディスク&GHA加工アルミクラッチを投入、そしてクラッチ操作が軽くなり

クラッチへのオイル吐出量が倍になるクラッチリフターも装備。

オイルストレーナーも必ずチェックし クラッチセンターリフターピンは抵抗の無い位置を出す。


↑映像は250

前述したピストンは新調し圧縮漏れ防止のコンプレッションスリット、ピストンサイドには摺動抵抗低減&焼付き防止に

サイドスリット加工を施した、400にもピストンピンには軽量タイプを投入。

ノーマルシリンダーにはクリアランスが大きくならない程度に超細密加工を追加加工、シリンダーの空き長持ち対策を実施。

そしてシリンダーはすわりの良い位置出しを行い設置、ピストン上死点を測定し「本当のTマーク」を刻印。


↑映像は250

次いでいよいよヘッドの製作に入る、チューニング目的に応じてヘッドポーティングのやり方は異なる。

やりようによってはバルブの挟み角を変える効果同等のやり方もある。

場合によっては燃焼室のスキッシュエリア角補正も行う、効率良く爆発圧がピストンに集中させる為に。

オートデコンプ機能が機械的なリミッターになっているのでそれを削除、オートデコンプ削除後大きなオイルポートが

2箇所開いているのでそれを塞ぐ。この塞ぐ加工はアルゴン溶接が適しているが一部分とは言え高温に横のカム山が

さらされる為焼き入れ加工も同時に行う。そして排気側のカジリ対策にカム山のオリフィス加工&吸出し効果がある

面取り加工も行っておく。またオートデコンプ亡き後 ロッカーアームのバランスを取る為不要になった部分を削除。

キーポイントはバルブとシート面の当たり幅だ、勿論メーカー指定の寸法とは異なり 「長く気密性を保てる」加工を

施す。いかに有効な圧縮を維持出来るかがポイントとなる。

チューニングの度合いによって強化カムスプロケットを使う場合も有る(今回は投入)。

オイルラインにはヘッドに向かうオリフィス加工を行いヘッド周りの強化を図る。

そこで最後の仕上げ;ほとんどのXRはカムタイミングがずれているのでベストの位置に合わせ固定してやる。

またエンジンを組む時点で純正マニュアル通りのトルクでは行わない、独自の手法で施工。パッキンなども気密性が

上がりつつ 張り付かない手法で施工。あとはエンジンを搭載しキャブセッティングを行う。

この後の作業で“慣らし”いかんでこれまで施した作業が実るかどうかが決まってくる。

こうして作り上げたのがこの↓XR400Rです。

排気系はベストとは言えないがオーナーさんの意向により付いていたものから変更無し。

C.D.Iは高進角型を用い ノーマルより1.000rpm伸びるようになっている。

ついでにノーマルはアクセルが重く疲労軽減の為 戻し側ワイヤーを削除しシングルワイヤーのややハイスロになる

ハウジングを取り付けた、キャブ側はリターンスプリングが強いので張り付きが出ない程度に柔らかくなる加工も施した。

どんなフィーリングになったかはオーナーさんの声が入れば紹介します。


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