=ワークスドライバーから見るS20型エンジンの素性=
(Prince designation GR8B型)


以前フェアレディZ432が活躍していた頃の記述で下記↓を紹介した。





何のエンジンの3Lなのだろうか。桑島選手のZ432にも載せられていた。

OHV 3L


「Z432のエンジン(S20型エンジン)はあまりにも震動が激しく」 の行がある。

巷にはあまり聞いた事が無い。

フェアレディZ(S30)は開発時 プロペラシャフトからの振動が出て

デフ位置を変更して解消した経緯がある。

それとは違うのか

気になる文言だ。

最近ワークスドライバーの黒澤元治選手がGT-Rについて回顧録を書かれているものの中で

S20型エンジンは「その回転に対するバランスの悪さでエンジン振動がものすごく出る」とある。

以前にもワークスGT-Rで高橋国光&長谷見昌弘選手が メカから10.000rpmまでで止めてくれと

告げられていた。しかしレースとなるとついつい回してしまう するとプーリーやフライホイルの

ネジが緩むという事象に悩まされたと言っていた。


=黒澤元治選手 回顧録=

ワークス最期のエントリー ‘72 富士マスターズ250キロレースにて

それでバネレートからやり直して、ちょっと乗りにくいけどもタイムの出るマシンにして最終レースに臨んだんだ。
今まではエンジン回転数を8500rpmくらいで抑えていたのかな? エンジン屋さんも「回せるだけ回していい」
ということになってね。それで初めてあのS20型エンジンを1万…1万300rpmくらいまで回した。
それであの時のベストタイムが出たんだよ。ついに富士の6kmコースで2分を切ったんだ。
R380でさえ1分56秒くらいしか出てないのに、1分58秒3っていうタイムが出た。
決勝は、ロータリーの周回遅れが体当たりしてこなければ勝てたんだよね…。
今思うとね、S20型エンジンはその回転に対するバランスの悪さでエンジン振動がものすごく出るから
結局ブロックだとかクランクのメタルを押さえる部分とかすごくゴツくなってさ。
だから、良いエンジンだったけど重かったよね。どでかいエンジンでさ。
でも最後の頃はね、1万rpm以上回ったから、バランスも少しずつ直してきて良いエンジンになったんだよ。
最後の頃は、限界まで回しても壊れなかったね。R380はその頃はもうル・マンに出ないっていうことになって
開発が止まっちゃっていたから。当初はR380のエンジンの方がすごく良かったけども、
最後はGT-Rの方がパワー出ていたんだよ。結局、中身はほとんど同じになっちゃったんじゃないの? 最後は。

普通に街乗りレベルであれば「振動?」というものは特に感じないだろう。

あくまでもレースと言う場で最大限パワーを引き出す走り方をすれば という前提で。

レース界ではS20型は振動が多いエンジンという事だったのだろう。

青地康雄氏の回顧録によれば ワークスGT-RのS20型エンジンはヘッドやシリンダーは

冷却効果改善の為ウォータージャケットを大幅に改良 最終燃焼室は吸気側「多球形」 排気側「ペントルーフ」に

変更する事により大幅に出力アップする事が可能になった。

カムシャフトに至ってはレース毎に見直していた。

HT・GT-R販売時期とレース活動の時期を見れば 市販車GT-Rにはレースで得たノウハウは

フィードバックされていないだろう。

K3・K4などのヘッドではなく まったくの“別モノ”という事だ。

おそらく最期の方はクランクシャフトの動バランスに注力を注いでいたと思われる。

黒澤選手曰く 「最後の頃は、限界まで回しても壊れなかったね、

最後はR380よりGT-Rの方がパワー出ていたんだよ。」

“究極のワークスS20型エンジン”の完成形に至っていた。

●気になる1台 下記↓転記

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私の場合はそのワークスGT-Rに憧れていたので 一般市販のGT-R(S20型エンジン)への

興味は知れば知るほど興味は薄れていった。

止めは実際乗ってみて正直落胆したのが決定打だった。

確かに当時としては市販量産車には「掟破り」「大人気ない」的な造りのエンジンには間違いない。

ただその市販GT-Rにワークスの姿を重ねる事が出来ない以上

永年の夢 “R”の所有は諦めた。

時間だけがただただ過ぎていった・・・


しかし子供の頃からの憧れは簡単には捨てきれなかった。

そんな時青地さんから頂いたフェアレディ240Z「レーシンングマニュアル」の

手法を活かし L型エンジンのハコスカなら当時のかほりを多少でも感じる事が出来るのではないか

と 考えるようになってきた。

私の場合 以上の経緯によってに邁進する事になったのです。

------------ Bonus -----------

あらためてワークスS20型エンジンを見てみよう。

ワークスHT・GT-R軽量パーツ(当HP別項記載済:エンジン系のみ)
   部品または部位 → 主要対策
 エンジン関係  クーリングファン → 径の短縮
 フライホイル&プーリー → 軽量品
 コンロッド&バルブ → チタン合金製
 エアファンネル → チタン合金
 ※ラヂエター → アルミ製3層
 エキゾーストマニホールド→軽量品ショートタイプ
 SPL;ヘッド シリンダー&スリーブ クランク

コンロッドもさることながらチタンバルブの効果は絶大

バルブが軽くなると言う事はバルブスプリングのレートを下げられる、

と言う事はフリクションロスの低減も同時に可能。

フライホイルの軽量化以上の効果が見込まれ アクセルレスポンスは比較するに値しない。

またかねがねの疑問であったラヂエターはノーマル真鍮製かアルミ製か だが

ワークスは軽さだけを狙ってアルミを選んだわけではない、

冷却効果も兼ね備えたアルミを早期に選んでいる。

止めに スペシャル(SPL)として ヘッド シリンダー スリーブ クランクとある。

エンジンを構成する ヘッド カムシャフト シリンダー ピストン コンロッド クランク

そして吸気の機械式インジェクション 排気のエキゾースト・・・

コレだけ違えば同じS20型エンジンと言えるのだろうか。

R380のGR8とも異なるS20型エンジン

ワークスと市販車は GT-RとGTぐらいの違いはあるのではないだろうか。

良く言えばワークスS20型エンジンをデフォルメしたのが市販GT-RのS20型エンジン

ということであろう。

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↑上記のつづき

BHオークションに渡邉氏所有のレーシングHT・GT-Rが出展された。

確かに日産スポーツコーナーで製作された最期の1台のようだ。

生前 渡邉氏が「このエンジンはワークス最期のレースで黒澤さんが使っていたS20型エンジンだ」

と言っていたという。



↑このエンジン


もしコレが本当であれば「日産ワークスが磨き上げた最高のS20型エンジン」と言うことになる。

今現存している事自体が奇跡だ。

是非ホンモノか中身を検証して欲しい

一目瞭然だと思う。


残念ながら落札した業者が販売中

日産が買い取って コレクションホール入りをさせるべき。


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