■吸入空気温度と出力の向上
従来から懸案になっていた吸入空気温度については2月の富士スピードウェイでの暫定的な追加試験として
競技車両規定を度外視して行った実験で 吸入空気温度はかなり下げられる事が確認されていた。そこで
実際的に吸入空気温度の低減による効果確認の検討を進めた。すでにエンジンそのものについては 種々の
実験と数々の部品を試作して台上試験を繰り返しながら開発を進め 耐久性についてもこれまでの台上試験で
確認されてきたので出力向上という点では一つの限界に達しつつあった。そこでそれを補う為に車両側で出来る
のが吸入空気温度の低減である。吸入温度を下げる事はエンジンそのものの実力を損なわずに実質出力を向上
させることになるので おろそかにするわけにはいかなかった。従来からエンジンの性能比較については 一般に
台上試験により得られた馬力を修正式により標準状態に換算して比較してきた。JISに示されている自動車用
ガソリン機関の性能試験法によると 出力を標準状態(大気圧760mmHg、温度20度、湿度60%)に換算する為の
修正係数Kを次式で表している。従って吸入空気温度を下げてKの値を小さくすれば実際の出力は向上することになる。そこで車体外部より新鮮な
空気を直接エアホーンに導く事が最も良く このためにエアガイドが必要になりその取入れ口の位置を何処に配置
すれば効果的かが問題である。競技規定をも考慮し 図に示すように3種類について実験した結果 装置bRはかなり外気温近くまで低下させる事が出来 競技規定からも問題なく好結果であったが ラヂエターのコアを潰して
エアガイドにするため特殊なラヂエターを製作しなければならなかった。しかしこれによる効果は大きく エンジン
吸気温度は外気温プラス1〜2℃ぐらいまで下げる事が出来るので あえて試作することにした。