空気抵抗の低減
1.)ライトカバーの影響2.)ボディ各所の段付き部の影響3.)アンダーカバーの効果4.)オーバーフェンダーの形状5.)オイルクーラーの取り付け位置と取り付け方法の影響6.)フロントフードにノーズカバーの取り付けによる影響7.)リアテールウィングに対する基礎的実験
ライトカバーはレース用にするに当たってライトを取り去ったので その穴を埋める為にカバーを取り付けたが PGC10R
その形状がどう影響するか調べた。またドアや各部の取り付け部にわずかな段差があっても抵抗になるので
ガムテープを貼り面一になるようにすると どの程度空気抵抗が減少するかを調べた。
軽量化の為にFRP製のパーツを採用すると その取り付け部や合わせ面に段差がつきやすいが それが
どのくらいのものかデータで分かれば作業に当たって面一になる事の重要性が理解できる。
アンダーカバーに関しては風洞実験でもコレを取り付けると空気抵抗が明らかに減少する結果が出たが
デメリットもあるので その兼ね合いで結論は持ち越した。結果として作業性の悪化なども考慮しアンダーカバーを
装着してレースに出場したのは極わずかだった。
ワイドタイヤの採用によってオーバーフェンダーを取り付ける事になったが漫然とその形状を決めるのではなく
空気抵抗が大きくならなくて しかもコレがスポイラーの効果を発揮してダウンフォースが得られるなら
一石二鳥になるかもしれないという事でデータに注意したが やはりそれは欲張りすぎであった。
しかし空気抵抗が増大しないような形状にするデータが得られた。オーバーフェンダーに関しては この後も
さらに形状が見直され かなりな変化を見せるようになる。とりあえずオーバーフェンダーが緩い円弧形状に
なっている方が良好であった。
フロントノーズカバー(俗に言うレーシングジャケット)は その形状だけが問題となるのではなく 冷却空気の
取り入れやその出方との問題もあり エンジン出力の向上との兼ね合いも考慮する必要があった。
更にこの部分の形状は車輌のホモロゲーションを取らなければならないという問題があった。
テールウィングはダウンフォースを得る為に将来の取り付けを想定してのデータ取りであった。
ボディ上面の空気の流れは テールウィングの取り付けによって 空気の流れはファーストバックスタイルの
クルマのようになって抵抗が小さくなる事が分かった。
6.)フロントノーズカバー(俗に言うレーシングジャケット)は実現しなかったが もし日産が思考し製作したならば どんなものになっていたのだろうか。
1970 5月以降 PGC10R車輌にて
最高速度向上の為 空気力学的向上をめざし、テールウィングの開発実験結果 ウィングなし:205km/h ウィング付き:210km/hと向上(エンジンパワー換算:12馬力アップに相当)
10月10日 日本オールスターレース 243台エントリー〜プライベーター杉崎選手の手によってリヤウィングを付けて優勝 ベストラップタイム 2分05秒85高橋国光が出したが予選でピットクルーの不慮の事故が発生しニッサンファクトリーは喪に服し出場を辞退 当面の目標としていたR380‐T型のタイム2分05秒02にはいま一歩及ばなかったがセダンタイプの車が05秒85をマークできた事が驚異的で開発効果が十分発揮出来た。
風洞実験にて10度・20度・30度テスト結果:10度〜効果出ず 30度〜効果有り しかし高速コーナーでフロントが浮き強アンダーステア発生結果:20度効果有り フロントアンダー出ず この角度に決定
1971
5月3日 ‘71 日本GP優勝以降 GT-Rは強いアンダーステアが問題となり サーキットでのタイムは伸び悩んでいた :アンダーステア対策でフロントスポイラーが提案
10月10日 富士マスターズ250キロレース 新型サバンナRX‐3デビュー戦 ⇒ ワークスとしてフロントスポイラー装着
予選:高橋国光2分01秒62 黒沢元治2分01秒92 北野元2分02秒55
ロータリー勢 片山義美カペラ2分03秒09 寺田陽次郎サバンナRX-3 2分03秒71
決勝 雨 : 優勝黒沢(ドライ) 2位高橋(オールウェザー) 3位片山(1分遅れ) 〜10位北野(ワイパー故障) →通算49勝
開発は細かいところを深く探求する事が必須
ニッサンR380の開発過程においても2分の壁は容易には破れなかったことを考え まず現状のHT GT‐Rの姿を十分に知る事を目標として谷田部高速試験場で定地試験を実施。最高速度 0〜400 0〜1000 各速度からの追い越し加速などを試験し、データを比較検討して車両性能に対する極限追及の資料を得た。この結果目標に対して実施すべき開発項目は
1.)エンジンの出力向上 〜中略
2.)車両重量の軽減 〜中略
3.)空気抵抗の低減と空力特性の向上(スポイラーの開発)
空気抵抗については過去に実施した風洞実験データを再度検討し効果的なものについて規則とにらみ合わせて開発を進める。空力特性についてはあらためてHT GT‐Rの風洞実験を実施。抗力:8.5% 揚力:18%も4DrGT‐Rより良くなっている。しかし揚力をフロントとリヤに分けるとHT GT‐Rのフロント揚力は4DrGT‐Rより大きい事がわかり フロントスポイラーの開発に着手する。フロントのスカートに部にスポイラーを装着するとフロントの揚力は約11%減少し 効力で1〜2%程度増加するが この程度の増加なら問題ないと思われ テールウィングと組み合わせて実車で確認する価値があると考えられたので開発を進めた。スポイラーの大きさと取り付け角度は揚力と効力に影響するが まず効果的な角度範囲を求め 実車走行による運動特性をも考慮して開発が進められた。ある時はリアが流れすぎ ある時はステアリング操舵力が大きすぎる事もあった。個々の比較実験による効果を確認しながらより良いものにした。これにより実際目に見えたタイムアップは出なかったが富士6kmコースをコンスタントに2分03秒で走行できるようになった。